生産ラインの産業用カメラや公共施設のカメラ等、小型化や発熱を抑えるため低電力化が求められる組込み機器に向け、エッジでのAI処理をますます利用されるようになっています。ルネサスRZ/Vシリーズマイクロプロセッサ(MPU)は高い電力効率の動的再構成プロセッサ (DRP: Dynamically Reconfigurable Processor)を内蔵し、AIマーケットのニーズに応えることができます。DRPテクノロジーは、これまでと比べ、より高いAI推論性能を提供するDRP-AI3へ進化を遂げました。
高い電力性能をもつMPUによりバッテリー駆動の長時間化、製品の小型化に貢献
新製品RZ/V2N MPUはハイエンドのRZ/V2H MPU(最大80TOPS)と同様、AIの演算効率を向上するプルーニング(枝刈り)技術を適用したことにより単位電力あたりのAI性能が10TOPS/Wと、極めて高いAIアクセラレータ「DRP-AI3」を搭載しています。
来のRZ/VシリーズとRZ/V2NとのAI推論性能の比較を図 1に示します。代表的な分類系CNNであるResnet50の場合、プルーニング無し(Denseモデル)でもRZ/V2Mの7倍、プルーニングを使用(枝刈り率 90%)すれば23倍という圧倒的な性能を得る事ができます。この極めて高い電力性能がバッテリー駆動の長時間化や冷却ファン無しが求められる装置の小型化を実現します。

2カメラ入力でAIによる画像認識精度向上
RZ/V2Nは2チャネルのMIPI-CSIインタフェースにより2つのカメラを接続することが可能です(図 2)。これにより従来のシングルカメラによるAI画像認識と比較して空間把握性能が向上し、動線解析や転倒検知などを高精度に実現できます。例えば2チャンネルのカメラをダブルアングルに画像を例えば駐車場の台数監視とナンバープレート認識を1チップで実現できます。DMS(Driver Monitoring System)では前方カメラと車内カメラによるドライバーの2つの画像から車内外の状況把握と記録が可能になります。また2つのカメラでステレオカメラを構成することで、画像による撮像対象物までの距離を推定することも可能になります。これによりAIカメラや移動ロボット等においてAIによる画像認識精度の向上が可能です。

RZ/V2Hと同一アーキテクチャによる高いコンパチビリティによりお客様の設計資産を活用が可能
RZ/V2N MPUにはRZ/V2H と同様、Arm® Cortex®-A55クアッドコア、Arm® Cortex®-M33シングルコア、ISP(イメージシグナルプロセッサ)を搭載しており、RZ/V2Hでのソフトウェアの開発資産の流用が可能です。また、周辺機能の互換性が高いため、AI性能やシステム構成、リアルタイム制御の要否によって、ユーザはRZ/VシリーズMPUの幅広い製品ラインナップから最適な製品を選択可能です。
開発環境について、RZ/V2N AI Software Development Kitにルネサス製評価ボードキットやソフトウェア開発環境に加え、50種類以上のユースケースに対応する各種AIアプリケーションも提供します。これにより、AIに関する深い知見が無いユーザでも、AIアプリケーションを早期に評価・開発できるため、市場投入までの時間を短縮することが可能です。更にAIに関する知識を持つユーザはAIコンパイラ(DRP-AI TVM) を選択することで自身のAIモデルを使って開発することでRZ/V2Nへ組込むことができます。(図 3)

更に、ルネサス・エコシステムパートナよりRZ/V2Nを搭載したSOM(システムオンモジュール)ボード、SBC(シングルボードコンピュータ)、カメラモジュール等が順次提供されます。これにより、ユーザはハードウェア設計から解放され、AIアプリケーション開発に集中できるようになるため、迅速に製品開発できます。
このようはユニークな特長を持つ組込みAIプロセッサRZ/V2Nはすでに販売中です。評価ボードRZ/V2N-EVKとRZ/V2Nデバイスはいずれもルネサスオンラインストアより購入可能です。ぜひみなさんのAI機器開発にご検討ください。詳しくはwww.renesas.com/rzv2nをご参照ください。
*なお、本製品は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務の成果を一部活用しています。