掲載: 2022年12月21日
RX-Tシリーズは空調機器の室外機や産業用インバータを中心に採用されており、インバータ制御分野で高い評価を得ています。また近年は、UPS・ソーラーインバータ・EVチャージャといった電源制御アプリケーションでも採用が進んでいます。今回ご紹介するのは、この電源制御アプリケーションとしてUPSを例に、MCUによる電源制御を実現します。UPSは、以下の3つの機能を有する機器であり、MCUによる電源制御の基本を表現するのに最適な機器です。
UPS機能
- 商用電源をDC電源に変換するPFCを含むAC-DCコンバータ(以後AC-DC)
- 高圧DC電源を低圧DC電源に変換しバッテリにチャージ/低圧DC電源のバッテリ電源をディスチャージし高圧DC電源に変換するDC-DCコンバータ(以後DC-DC)
- DC電源からコンセント接続型の電子機器を動作させるAC電源に変換するDC-ACインバータ(以後DC-AC)
これら電源制御をRXファミリに搭載する以下の共通機能を使用し1MCUで実現しております。今回使用したMCUは、RXファミリのRX66Tシリーズですが、以下機能を搭載するRXファミリで同様、または一部を実現可能です。例えばRX72T、RX24Tなどです。
RXファミリ使用機能
- PWM出力タイマ(MTU3d,GPTW)
- 12ビットA/Dコンバータ(S12ADH)
- ポートアウトプットイネーブル(PWM出力緊急停止用)(POE3B)
- コンパレータ(過電流検出用)(CMPC)
- 12ビットD/Aコンバータ(コンパレータ基準電圧用)(R12DAb)
これらRXファミリに搭載するインバータ制御に最適な機能により以下回路方式の電源制御機能を構築しております。
UPS回路
- AC-DC
- モータ制御機器で多く使用されている電流連続モードインタリーブ構成PFCをMTU3による相補PWM出力(キャリア周波数60KHz)で駆動する事で電流リップルの少ないDC電源を出力しております。
- DC-DC
- 昇圧回路と降圧回路を合わせたチョッパ回路をMTU3による相補PWM出力(キャリア周波数40KHz)で駆動する事でAC-DC電源をバッテリへチャージ(降圧モード)、及びバッテリ電源をディスチャージしDC-ACへ供給(昇圧モード)を電圧変動なく実施しております。
- DC-AC
- モータ制御等と同様のブリッジ回路をGPTによる相補PWM出力(キャリア周波数20KHz)でパワー半導体をスイッチングする事により110V@50Hzの正弦波を生成します。制御アルゴリズムはベクトル制御とする事で歪みのない正弦波を出力しております。
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これらの回路を組み合わせる事でUPSを構成し、電源効率は最大98%以上を達成でき、専用品と同等の性能を発揮しております。これによりAC-DCのPFC IC、DC-DCのパワーICなどの専用品に加えMCUによる電源制御をラインナップ可能となりますので、お客様の選択肢が増え、適材適所でご使用頂ける様になります。
今回、インバータ制御の応用として電源制御(UPS)の実現性を紹介させていただきました。
今後もお客様ニーズに沿った良質な製品を世に送り出すことで、お客様のイノベーションに貢献していきます。
ルネサスRXファミリのさらなる展開にご期待ください。
奥付
- 今回ご紹介したUPSの詳細はUPSアプリケーションノートをご参照ください。
- UPSの一般的なシステム構成はUPSウィニング・コンビネーションをご参照ください。
- RX66Tに関する詳しい情報はRX66T製品ページをご参照ください。