第1回で解説したように100MHz級のMCUにネットワーク機能が求められつつあります。しかしIoT機器に対し個々にネットワーク機能を開発することは現実的ではありません。一般的にオペレーティングシステム(OS)の形でネットワーク機能を含む基本機能をまとめてOSベンダから提供を受けそれを活用することがセオリとなっています。100MHz級のMCU向けの代表的なOSのソースコードはAWS(Amazon FreeRTOS)やMicrosoft(Azure RTOS)から配布されていますが、IoT機器開発にはネットワーク機能や暗号通信機能も必要で、実装すべき機能に対するソースコードが多岐に渡ります。従ってOSのソースコードをユーザシステムに組み込むことが非常に難しいという課題があります。
この課題に対し、ルネサスではIDE(e2 studio)を用いて、検証済のOSのソースコードをGitHubから自動でダウンロードし、ビルド可能な状態にすることができます。 これにより、ユーザはアプリケーション開発のみに専念することができます。ここでは、「RX65N Cloud KitをMicrosoft Azureと通信させる」ことをAzure RTOSを題材に紹介します。
ルネサスからは以下を提供しています。
- RX65N Cloud Kit (等のルネサスマイコン評価ボード)
- e2 studio
以下ステップのみでOSインストール完了となり、ユーザはアプリケーション開発のみに専念することができます。
- Renesas ハードウェアを設定する
- 開発環境をセットアップする
- Azure RTOS サンプルを構築して実行する
RX65N/Wi-Fiの組み合わせをベースに上記①~③を解説したチュートリアルはこちら。
他のRXマイコンや他の通信(Wi-Fi/セルラー)、OTA機能の有無なども柔軟に変更できるようスマートコンフィグレータで支援する機構も備えています。また、ユーザボードでの開発も容易になるよう拡張性を持たせています。例えばユーザAはPWMを用いたモータ制御、ユーザBはIICバスを用いたセンサ情報収集を実装したいと考える場合、ユーザA、ユーザBそれぞれに適切な機能のみをアドオンできるような拡張性を持たせています。
RXマイコンや通信、各種機能等の対応状況は以下一覧表をご参照ください。最新の対応状況も合わせてご参照ください。
RXファミリが誕生して10年経ちました。最初の1年目では筆者はRXマイコンをネットワークに繋いで通信ができるようになるまで1か月かかりましたが、今なら15分くらいでできるようになりました。筆者は中学生の頃にWindows95に触れインターネットの凄さに気付きました。同時にWindowsを作ってくれたマイクロソフトを深く尊敬するようになり、エンジニアを目指すきっかけとなりました。今ではそのマイクロソフトのエンジニアと技術定例会議を行い、RXマイコン用のOSの共同開発ができるようになり、自身のキャリアの大きな節目にもなりました。引き続きお客様にアプリケーション開発に注力いただけるよう基礎部分のソフトウェア開発を進めてまいります。