メインコンテンツに移動

最新のE/Eアーキテクチャーへの移行をサポートするルネサスの貢献

画像
Adam Korbel
Senior Staff Engineer
掲載: 2021年2月25日

昨今、報道などでよく「自動車メーカーの市場価値は、イノベーション、特に従来型の車両設計から脱却し、サービス・オリエンティッドなSWプラットフォームによって構築される電気自動車、自動運転車、コネクテッドカーへの進化の速度によって量られる」と表現されているのを目にするかと思います。株式市場においては、新興のハイテク自動車メーカーの特徴である高い技術革新性とアグレッシブな事業成長目標の方が、それと比較して新しいクルマを提供するための変革や、そのための取り組みが遅れているように見える従来の自動車メーカーよりも高く評価されています。新興の自動車メーカーのゴールは、よりスマートな機能を搭載した従来の自動車から、アップデート可能なスマートフォンのような統合的なコンセプトの自動車への飛躍です。そのような中で既存の自動車メーカーは、従来の高度に分散したECUで成り立つE/Eアーキテクチャから、より統合されたドメイン/ゾーンアーキテクチャへの変容という課題に直面しています。

TESLAのような比較的新規に参入してきた自動車メーカーは、従来のECU開発のレガシーを持たないため、ドメイン及びゾーンベースの新しいE/Eアーキテクチャを搭載した車両を最初から開発することが出来るというメリットがあります。

画像
Korbel 1

これまで以上に強力な車載プロセッサ、マルチコア・マイクロコントローラ、ギガビット・イーサネットのような高帯域幅ネットワーク技術の登場は、車両内処理の集中制御を早期に実現したこのような会社に明らかなアドバンテージをもたらしています。従来の自動車メーカーは、長期的な競争力を維持するために、自動車のハードウェアやソフトウェアの設計や設計プロセスを根本的に変更しなければならないのです。このことは、従来のメーカーに更なる課題をもたらします。それは、分散型の古いコンピューティングアーキテクチャを搭載した車両が、しばらくの間年間何百万台も生産され続けるということです。 つまり、長期的な競争力確保のために開発プロセスや電子システムの根本的な変更を行いつつ、短期的には競争力確保のために既存のプロセスや車両アーキテクチャの中で新たな機能を搭載していく、というチャレンジを余儀なくされるのです。

これに加えて、電気自動車(EV)の生産への移行を加速させているCAFE(Corporate Average Fuel Economy)の燃費基準の更なる厳格化が圧力となっています。基準に追いつけない自動車メーカーは、CO2認証のペナルティに直面し、損益を圧迫する一方で、EVのみに注力する新規参入者には利益をもたらすことになります。このペナルティ制度は、米国11州及びEUにて、より環境に優しい自動車生産への転換を業界に促すために設けられました。この基準を超えた自動車メーカーは、年間生産車両プロダクトミックスの基準を満たしていない企業にCO2削減証書を販売することができます。 例えば、TESLAは、従来の自動車メーカーから支払われる追加収入という形で、この規制から大きな利益を得ており、その額は2020年には$1.6Bにものぼります。

このような背景もあり、資本市場におけるVW, DAIMLER, BMWを合わせた企業価値は186Bユーロと、TESLA一社の評価額である5700Bドルと比較して遥かに低い額となっています。TESLAは2020年に約50万台の車を生産していますが(参照)、CO2削減証書の収入を含めない自動車生産では利益を出していません。(参照)。一方、同期間において、これらドイツ自動車メーカー3社(VW, DAIMLER, BMW)は約1,400万台を生産し、違約金の支払いを含めても営業利益を出せているにも関わらず、です。

このように、新しいE/Eアーキテクチャは、迅速なEV化や新しいソフトウェアによる機能追加の迅速化、さらには、TESLAのもう一つの技術革新ともいえる、販売済み車両に対する有料の機能追加サービスに基づく新たな収益獲得を可能にし、従来型自動車メーカーの成功要因となることでしょう。開発効率の向上だけでなく、株式市場においても、これらの企業に大きな影響を与えることが期待されるのです。

では、ルネサスはOEMや関連するTier1サプライヤーをどのようにサポートし、より迅速な変革の実現をサポートしていくことができるのでしょうか。コネクテッドカー、自動運転車、電気自動車に搭載される最新の集中型E/Eアーキテクチャ実現にどのように貢献できるのでしょうか。また、COVID-19は自動車のメガトレンドやE/Eアーキテクチャの動向に中長期的にどのような影響を与えるのでしょうか。これらの疑問は、最新のトレンドを再確認し、当社の半導体チップとソフトウェア開発戦略を見直すことにつながります。

当社は市場のメガトレンドとしては変化はなく、コネクティビティ、電気自動車、自動運転の分野が2桁の長期的成長すると考えています。

画像
Korbel 2

COVID-19は公共交通機関や”Shared”サービスの今後に影響を与えましたが、自動車の根本的なトレンドを変えたわけではありません。パンデミックの影響でシェアードサービスの需要が減り、将来的には個人での自動車利用が増えるという見方もありますが、ドライバーレスのタクシーサービスのように、他の乗客はもちろん、ドライバーさえもスペースを共有することなく、一世帯が一度に利用することができる、同乗を必要としない「シェア」もあります。 結局、「シェア」でも「パーソナル」でも(つまり、CASEでもPACEでも)、新しいE/Eアーキテクチャや技術要件は変わらず、半導体デバイスやソフトウェア開発のロードマップも影響を受けません。 例えば、ギガビット・イーサネット/TSN、最新の機能安全セキュリティ機能の充足、無干渉機能(Freedom From Interference:FFI)を備えたサービス指向アーキテクチャなどの要件は変わりません。当社は、自動車市場への長期的なコミットメント、長年にわたる自動車顧客との協業、クロスドメイン/マルチアプリケーションMCU、SoCのポートフォリオにより、十分な地位を確立しています。

画像
renesas-cross-domain

ルネサスの新製品は、前世代からのソフトウェアおよびハードウェアIPの再利用性が高く、ローエンドからハイエンドまでのスケーラブルなデバイス・ラインアップを実現し、開発プロジェクト内での柔軟性を最大限に高めることができるため、お客様の価値を創出することが出来ます。

これにより、ルネサスのR-Car SoCとRH850 MCUを再利用することで、既に開発されているAUTOSARやLinuxベースのソフトウェアをBOM最適な新しいアーキテクチャで使用することができ、大きなメリットが得られます。ルネサスのチップセットを複数の世代に渡って使用することで、お客様の開発におけるリスクと労力を最小限に抑え、コストの削減、開発期間の短縮、製品のTime To Marketの向上を実現します。

最近のM&Aにより製品ポートフォリオが拡充されたことで、ルネサスはオートモーティブ分野のすべてのアプリケーションにおいてアナログ/パワーICを含む完全なチップセットソリューションを提供することが可能になりました。このアプローチは、付加価値をもたらし、お客様における開発工数の更なる削減に寄与します。例えば、ASIL-DパワーマネジメントIC(PMIC)とASIL-D対応のR-Car SoCを組み合わせることで、機能安全(FuSa:Functional Safety)の要件をより簡単に満たすことができます。このアプローチは、消費電力と電力管理を最適化しながら、システム性能とシステム全体の機能安全能力を向上させます。

画像
Korbel 4

ハードウェアの重要性と同様に、全体的なコストとタイミングの観点から、車両開発プロセスではソフトウェアが非常に重要な要素となりつつあります。車両のコア機能処理を集中化し、細部を抽象化した電気的なアーキテクチャは、ソフトウェア開発をより管理しやすくし、かつては想像もできなかったレベルのソフトウェアの再利用を実現します。

自動車メーカーやTier1は、すでに開発済みのソフトウェアやハードウェアをレガシープラットフォームからより効率的に再利用するために、事業ユニットの再編成に巨額の投資を行っています。また、アプリケーション・ドメインを超えてスケールし、車両プラットフォーム間で再利用可能な共通の実行環境を提供する独自のソフトウェア・プラットフォームの開発に巨額の投資を行っています。

OEM側での企業独自の「車両OS」ソフトウェアプラットフォーム、Tier1側での効率的で費用対効果も高く、アジャイルでクロスセグメントの開発ユニットを提供することが標準となります。

ルネサスは、既に255社のソフトウェア・ハードウェアパートナー企業からなるエコシステムが確立されていて標準ソリューションやカスタムソリューションを提供できる「R-Car Consortium」に加えて、デバイスに依存せず、OSに依存しない共通の「xOS」ソフトウェアプラットフォームを提供し、これらのOEM/Tier1のアプローチをサポートします。

画像
Korbel 5

R-Carデバイス用のxOSソフトウェアプラットフォームには、OS抽象化レイヤ(OSAL)、OSおよびデバイスに依存しないHW抽象化レイヤ(HAL)ドライバ、ミドルウェアサービス、および関連するソフトウェア開発ツールが含まれています。これにより、お客様はクロス・セグメントで、効率的で、またコスト効率の高いソフトウェアの再利用が可能になり、最終的にはより迅速な市場への製品投入が可能になります。

このように、自動車のE/Eアーキテクチャの急速な進化は、消費者に大きな影響を与えると同時に、自動車メーカー自身の健全性と株式市場における評価にも大きな影響を与えることになります。これは、既存のハードウェアやソフトウェアの資産を持ち、新しいハードウェアやソフトウェアのシステムへの変換・統合を行う従来の業界のプレーヤーにとっては、厳しい挑戦となるでしょう。ルネサスの半導体ソリューションとソフトウェアの提供は、お客様のより迅速な製品投入をサポートし、安全で安全、環境に優しいコネクテッドモビリティの効率的な創出を可能にします。これにより、自動車の顧客から自動車メーカー、投資家まで、すべてのステークホルダーに価値を提供します。

ルネサスのチップセットソリューションの詳細については、当社のウェブサイトをご覧いただき、いつでもお気軽にお問い合わせください。 

この記事をシェアする