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Reality AIの買収から1年、ルネサスのAIソリューションのポートフォリオが拡充

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Mohammed Dogar
Mohammed Dogar
グローバルビジネス開拓&エコシステム担当 Vice President
掲載: 2023年7月4日

ルネサスがReality AIを買収してから、ちょうど1年が経ちました。その節目を記念して、2023年6月に米国カリフォルニア州サンタクララで開催されたイベントSensors Convergeでは、Reality AIの組み込みアプリケーション向け人工知能(AI)とTinyMLのソリューションを紹介しました。Reality AIのソリューションは、ルネサスのAI戦略の中でも重要な要素の一つです。7月には、サンフランシスコで開催されるSEMICON West/Design Automation Conference (DAC)2023で、ルネサスはパネルディスカッションを開催し、AIが半導体の設計・製造のあり方をどのように変えつつあるかを業界関係者とともに議論します。さらに今年の第4四半期には、AIをテーマにしたルネサス独自のイベント「Renesas AI Live」(英語)を開催し、講演やウェビナなど多数のプログラムを公開する予定です。

ルネサスはReality AIの買収により、新しいAIツールやシステムレベルのソリューションを手に入れました。今後はさらにお客様の開発プロセスを改善して開発が楽(ラク)になるように取り組んで参りますので、質問に答える形でその取り組みや考えについて伝えようと思います。

まず初めに、ルネサスはReality AIの買収に際してどこに魅力を感じたのでしょうか?

Mohammed:Reality AIとの関係は、ルネサスがRAマイコンのエコシステムを強化していた2021年にさかのぼります。私たちは、お客様がエッジあるいはエンドポイントで効率よくAIを実現できる方法を模索していました。その時、Reality AIが際立っていたのは、信号処理やその他の独自技術を機械学習(ML)と組み合わせて、非常に効果的で極めて小規模で超効率的な機械学習モデルを生成する優れた技術を保有していたことです。
AIにおいては、画像や音声を使ったアプリケーションがよく注目されますが、産業や自動車の分野では、非画像・非言語のMLアプリケーションも大きな可能性を秘めています。私たちはお客様が一般的に使用されるセンサからリアルタイムで高頻度に得られるデータを使用して、異常検知や分類、回帰などのAI処理が可能なTinyMLモデルを得られることこそ重要であると知っていたからです。

Reality AIと他のエコシステムパートナーとの違いは何でしたか?

Mohammed:私たちが調べた7、8社の中で、Reality AIはスキルセット、チーム能力、重要なAI技術の点で最高の組み合わせを持っていました。さらに興味深いことに、彼らは世界中の主要な産業および自動車関連のお客様をすでに獲得していたため、彼らの技術力は折り紙付きでした。それはまた、産業界がベンダに求めるような品質管理が実施できている事をも指します。さらには、いくつかの市場や分野においてとても深い経験を積んでいることがわかり、これはスタートアップ企業としては非常に稀な企業です。

買収から1年後経って、Reality AIとの統合状況はどうですか?

Mohammed:統合は驚くほど順調に進んでいます。Reality AI Tools®は、ルネサスの幅広いMCUとMPU製品をサポートできるようになりました。すでに64ビットのRZ MPU、32ビットマイコンのRXファミリやRAファミリに対応しており、今後、16ビットのRL78ファミリにも対応予定です。
また、買収を発表した際、メリーランド州コロンビアにあるReality AIの旧本社にAI CoE (Center of Excellence, AIの中核事業)を設立すると発表しましたが、1年経った今、このチームはお客様がAIとMLを使ったソリューションを構築するために、ルネサスのハードウェアポートフォリオ向けに様々なソフトウェアツールを使ったエコシステムを構築しようとしています。この短期間で、すでにAIと機械学習のための設計に関して、全体的なUX(顧客体験)を向上させることに成功しています。

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なぜそれが重要なのでしょうか?

Mohammed:従来、AIツールチェーンと組み込みツールチェーンは全く別のものとして存在していました。ですから私たちはその2つ、Reality AI Toolsと組み込み向けEclipseベースの統合開発環境であるルネサスのe² studioがシームレスに動作するように、ツールチェーンを融合させることに尽力しました。そして、非常に早い段階で、これら2つのツール間のAPIベースのコンテキスト交換を構築することができました。もちろん、完全にシームレスに動作させるためには、まだ多くの作業が残っていますが、お客様が両ツール間で簡単にプロジェクトを移行できるように、2つのツールを確実に結びつけました。これは、お客様の開発を楽(ラク)にするために私たちが行ったことの良い例です。

この1年で、他にReality AIのとの成果を挙げられますか?

Mohammed:例えばモータの電気的な信号を利用してモータの異常を検出するなど、特定のユースケースに向けたAI/MLソリューションを、複数のポートフォリオに追加したことです。このモータの例では、ルネサスのモータ制御キットと統合し、Reality AIモデルをモータ制御システムの開発プロセスに統合できるよう、Reality AIソフトウェアの新しいアドオンツール「RealityCheck™ モータツールボックス」を開発しました。これにより、追加センサなしでモータの状態を検出できるようになるため、お客様はファームウェアを更新するだけで予知保全や状態監視の機能を追加することができます。
私たちはまた、HVACアプリケーション向けに「RealityCheck™ HVAC ソリューション・スイート」を開発しました。エアコン、ヒートポンプ、冷凍システムなど、HVACユニット自身が様々な異常や故障を検出できるシステムを構築できます。ハードウェア、ソフトウェア、リファレンスデザイン、各種センサおよび商用レベルのデータセットを含んだ、エンドポイント向けAIソリューションパッケージです。お客様のHVACシステムをルネサスの専門ラボで測定し、高品質のデータを収集すれば、高精度なAIモデルを構築することもできます。つまり、このソリューションはデモンストレーション用のアプリケーションソフトウェアも含まれていますが、お客様のシステムにおけるデータのパイプライン化やデータ収集を支援するアドオンのソフトウェアであり、完全に統合されたソリューションです。

ルネサスがReality AIを事業ラインに取り込む中で、最も驚いたことは何ですか?

Mohammed:最大の驚きは、お客様からの反応です。買収後、Reality AIへの関心が高まることは予想していましたが、その関心の高さと多さに圧倒されました。すでに、米国、ヨーロッパ、日本、中国、台湾、アフリカに至るまで、Reality AIのソリューションを使い始めているお客様がいます。そのニーズに応えて必要なサポートを提供するために、私たちは世界中でチームを増強しました。私たちは、Reality AIとルネサスのMCUやMPUを組み合わせることで、優位性の高いポジションを獲得しました。ルネサスのプロセッサ上で動作するReality AIのファームウェアを搭載したお客様の製品も、まもなく市場に登場します。私たちの取り組みはまだ始まったばかりですので、今後にご期待ください。

Reality AIに関するソリューションの詳細は、こちらをご覧ください。renesas.com/realityai

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