ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)はこのたび、広範囲にインダクタ(コイル)の値を変化させても、その性能指標であるQ値の劣化量を従来技術の1/2まで抑制することが可能な、可変インダクタ技術を開発しました。また、このオンチップインダクタを用いて超広帯域可変周波数発振器を設計し、その基本動作を確認しました。
近年、AV機器やパソコンなどではギガビット/秒を超える種々の高速な通信が用いられています。このような高速回路には、能動素子であるトランジスタ以外に、インダクタや容量(コンデンサ)といった受動素子が多用されます。多種の通信規格に対応するにはこれらのインダクタや容量の値を広範囲に変化させることが求められますが、特にインダクタの値を変化させることは困難でした。従来はインダクタの値を変化させるためにインダクタ同士の接続をトランジスタのスイッチで変化させる方式や、磁性体を機械的に動かす方法が提案されていましたが、前者はスイッチであるトランジスタの抵抗がインダクタの特性(Q値)を大幅に劣化させる、後者はシリコンチップへの集積化が難しいといった問題がありました。
このたび開発した回路は4つのインダクタを2個ずつ並列に接続するブリッジ構造で構成されており、このブリッジ回路の電気的なバランス点をトランジスタのスイッチで移動させることにより、インダクタの値を広範囲に変化させるものです。このため、インダクタの値が変化してもインダクタの性能低下を抑制することができます。
たとえば今回試作した可変インダクタでは、10―20ギガヘルツ(GHz)という高周波領域でも従来技術に比べてQ値の劣化量を1/2程度に低減できました。さらに今回、この可変インダクタを用いた周波数発振器を試作し、10―20GHzという超広帯域での動作を確認しました。
ルネサスは、今回の成果が受動素子を多用する高速回路やアナログ・RF回路を小型化・高性能化する中核技術と考え、今後も研究開発を加速してまいります。
なお、当社は今回の成果を、本年6月15日から18日まで、米国ホノルルで開催される学会「VLSI回路シンポジウム(2010 Symposium on VLSI Circuits)」にて、現地時間の16日に発表しました。
以 上
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