ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)はこのたび、フラットパネルテレビ、PCサーバ、通信基地局、太陽光発電などの電源ユニット向けに低損失化、高効率化により省電力化に貢献する高耐圧(600V)のNチャネル型パワーMOSFET「RJK60S5DPK」を製品化し、本日よりサンプル出荷を開始いたします。
新製品は、電源ユニットで交流(AC)を直流(DC)に変換する、1次側パワースイッチング回路向けの製品で、高精度スーパージャンクション構造(注1)採用によりパワーMOSFETの重要な特性指標である総合性能(FOM(注2))を当社従来品と比較して約90%改善した高耐圧パワーMOSFETシリーズの第一弾製品です。新製品は、(1)当社従来製品から約52%低減した150mΩ(標準値)の超低オン抵抗(注3)により低損失化を実現し、(2)当社従来品比で約80%低減した6nC(標準値)のパワーMOSFET駆動容量(ゲート・ドレインチャージ容量(注4))により、高速スイッチングを実現しており、セットの小型化や電力変換効率の向上に貢献します。
新製品のサンプル価格は、1個あたり500円で、2011年4月から量産を開始し、同年10月以降は月産50万個を量産予定です。
近年、環境保全等のために機器の省エネルギー化が推進され、様々な機器の電源回路で高効率化が求められております。特にフラットパネルテレビ、通信基地局やPCサーバ、太陽光発電などの高出力のスイッチング電源では、電力変換効率の改善による省電力化が強く推進されており、パワーMOSFETのオン抵抗低減が要求されます。しかし、従来のプレーナ構造の改良では限界があるため、今回、ルネサスがこれまで培ってきたパワーデバイス技術を駆使し、深溝形成プロセスによる高精度スーパージャンクション構造を開発し、単位面積あたりの低オン抵抗化を実現したものです。
(1)業界トップクラスのオン抵抗を実現
当社従来品に比べ約52%オン抵抗を低減し、150mΩ(ID=10A、VGSS=10V時の標準値)を実現しています。このため電力変換時の低損失化が図れます。
(2)高速スイッチングを実現
スイッチング速度に影響するパワーMOSFET駆動容量(Qgd)を当社従来品に比べ約80%低減し、6nC(ID=10A、VGSS=10V時の標準値)を実現しています。このため高速スイッチングによる電力変換効率の向上が可能です。
新製品は、従来の標準パッケージTO-3Pと同等の外形を採用し、ピン配置も業界標準を採用しているため、従来のプレーナ構造MOSFETで評価されていたスイッチング電源回路基板への実装が容易です。
なお、高精度スーパージャンクション構造パワーMOSFETシリーズとしては、当社従来のプレーナ構造シリーズより単位面積あたりのオン抵抗を約80%低減しているため、従来と同オン抵抗品の場合、チップ面積が低減可能です。このため、従来TO-3P(15.6mm×19.9mm)を使用していた製品をTO-220FL(10mm×15mm)で実現するなど、今後小型パッケージ品の展開も行っていきます。
加えて、当社は新製品を、フラットパネルテレビ、通信基地局、PCサーバなどのスイッチング電源で推進されている省エネ化に貢献できる製品と位置づけ、超低オン抵抗製品のシリーズ化を図り、積極的な拡販活動を進める計画です。
高耐圧パワーデバイスとしては、ルネサスは、この新製品の市場投入を契機に今後も続々と用途に適した製品開発を推進し、高耐圧パワーデバイスのビジネス規模を拡大したいと考えております。
新製品の主な仕様は別紙をご参照下さい。
以 上
(注1)スーパージャンクション構造:パワーMOSFETの構造の一つ。従来のプレーナ構造と違い、耐圧を下げずにオン抵抗を下げられるため、単位面積あたりのオン抵抗が低減できる。
<オン抵抗については、下記(注3)参照>
(注2)FOMはFigure Of Meritの略で、オン抵抗(Ron)とゲート・ドレインチャージ容量(Qgd)の積の数値がパワーMOSFETの特性指標となっている。
(注3)オン抵抗(Ron)はパワーMOSFETが動作している時の動作抵抗であり、数値が低いほど導通損失を低減できる。
(注4)ゲート・ドレインチャージ容量(Qgd)は、パワーMOSFETが動作するのに必要な電荷量であり、低いほど高速スイッチングが可能。
*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。
ニュースリリースに掲載されている情報(製品価格、仕様等を含む)は、発表日現在の情報です。 その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご承知ください。