~組込み分野での省電力、高信頼(ディペンダブル)、高速ネットワーク通信が実現可能~
2011年2月24日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)は、このたび、国立大学法人筑波大学(学長:山田 信博、以下筑波大学)との共同開発により、PCI Expressインタフェース(注1)を4伝送路(レーン)とマルチコアプロセッサ(8個のCPU)を搭載した高速ネットワーク通信向けSoC(System on Chip)・コミュニケータチップを開発し、業界最高レベルとなる80Gbpsの転送能力を実現しました。コミュニケータチップは、データ量に応じたきめ細かい電力制御や、ネットワークの障害回避を行うなど、組込み分野における低消費電力かつ高性能な高信頼ネットワーク通信が可能になります。

 なお、本開発は、独立行政法人 科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(CREST)の中の「実用化を目指した組込みシステム用ディペンダブル・オペレーティングシステム」領域(以下、DEOSプロジェクト)により実施したものです。コミュニケータチップは、研究課題「省電力でディペンダブルな組込み並列システム向け計算プラットフォーム」(研究代表者:佐藤 三久 筑波大学 計算科学研究センター センター長)のハードウエアプラットフォームに位置づけられ、さまざまな高信頼 ハイエンド組込みシステムへの適用が期待されます。

 このプラットフォームでは、通信容量要求に応じた通信リンク数の変更、通信速度制御など、きめ細やかな電力制御、性能制御を行います。また、リンク障害を検知した場合には他のリンクを使って通信を継続し、故障時におけるシステムのディペンダビリティを高めます。

 今回開発したコミュニケータチップは、DEOSプロジェクトで開発したPCI Express インタフェース(Rev.2.0準拠(注2))を4レーン×4ポート搭載し、80Gbpsの高い通信性能を実現します。また、制御用プロセッサとして8個のCPUコアを搭載しており、ネットワーク信頼性を高め、システム柔軟性を提供します。

本技術開発の背景

 近年、組込み分野における機器の高性能化と安全性向上への要求にこたえるため、並列処理システムの導入が進んでおり、このようなシステムでは、高性能かつ高信頼性を備えたネットワークが不可欠です。さらに、システム全体の低消費電力化も求められています。

 こうしたニーズに対応し、PCI Expressインタフェースとマルチコアプロセッサ(8CPU)を搭載した高速ネットワーク通信向けコミュニケータチップを開発し、80Gbpsの転送能力を実現しました。

 このたび開発したコミュニケータチップは、PC分野で標準的なデバイス結合バスであるPCI Expressに着目し、周辺デバイスの接続だけでなく計算ノード間を結合するネットワークとして利用することを可能にする技術により、従来のインターコネクションネットワークに比べ、InfiniBand(注3)に匹敵する高性能をEthernetよりはるかに低い電力で実現。加えてリンクを構成するレーンが故障した場合も残りレーンでこれを補い、様々なシステムに適用可能なネットワークを構築します。

開発したコミュニケータチップの特長

1. PCI Expressとマルチコアにより、約3.2Wで最大80Gbpsを実現

 試作チップは、PCI Expressインタフェース(Rev2.0準拠)を4レーン×4ポートと、制御用として、当社「RX」CPUコアを4個、「M32R」CPUコア4個からなるマルチコアプロセッサを搭載しています。クロック周波数は、最大400MHz(メガヘルツ)で動作し、転送処理性能は、最大80Gbpsを実現します。消費電力は約3.2Wを実現しています。

 コミュニケータチップは、ネットワーク上で通信中継地点として動作します。コミュニケータチップは自動転送機能を備えており、従来のCPUが転送処理を行う場合と較べて、約20%高速な転送処理が可能となります。また、マルチコアプロセッサは、低消費電力化にも貢献します。データ転送量を監視し、ソフトウエアで動的にPCI Expressインタフェースの転送レート、レーン数を切り替えるなど、データ転送量にみあった構成をとるなどきめ細かい調整が可能です。

2. 信頼性の強化

 コミュニケータチップは、マルチコアプロセッサ処理能力を利用して、ソフトウエアによる高度な転送制御、障害回避を行うことができます。ネットワークを監視し障害が発生すれば、適切に転送ルートの変更や、障害原因となったデバイスの切り離しを行います。これらの技術の組み合わせにより、組込む分野に必要な高い信頼性をネットワークに付与します。

 なお、本技術は2011年2月20日から米国サンフランシスコで開催される「国際固体素子回路会議(ISSCC:International Solid-State Circuits Conference)」にて、2月22日(現地時間)に発表及び、デモ展示を行いました。デモ展示では、パソコンのアドインボードとして、当該チップを実装したPCI Expressボードをパソコンに装着することで、実際の通信が行われていることを示しました。

 当該チップを用いることにより、PCI Expressインタフェースを装備した標準的なパソコン間の高速通信を、内蔵するCPUを用いて適用システム毎の種々の機能を柔軟かつ高信頼に実現することも可能となります。

以 上

(注1)業界標準のI/O(インプット/アウトプット)技術。(PCI-SIGのWebサイト:http://www.pcisig.com/home

(注2)本コミュニケータチップに搭載されるPCI ExpressのIPは、標準化団体が主催するコンプライアンス・ワークショップ(第62回:2008年9月8日から9月12日まで開催)にてRev.2.0準拠の認証を取得しました。

(注3)相互接続(インターコネクト)したサーバや通信インフラ装置等に使用されるI/Oを決める業界標準仕様

(InfiniBand® Trade Association(IBTA)のWebサイト:http://www.infinibandta.org/

*PCI-SIG, PCI Express,は PCI-SIGの商標または登録商標です。InfiniBandはInfiniBand Trade Associationの商標およびサービスマークです。その他、本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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