~エアコン、通信基地局、太陽光発電等、高出力のエレクトロニクス機器における省電力化に貢献~
2011年2月28日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)は、このたび、エアコン、通信基地局やPCサーバ、太陽光発電など高出力のエレクトロニクス機器向けに、次世代のパワー半導体用材料として注目されている炭化ケイ素 (Silicon Carbide以下SiC(注1))を用いたパワー半導体・ショットキーバリアダイオード(以下SiC-SBD)を開発しました。

 本技術による第一弾の製品として600V耐圧の「RJS6005TDPP」を2011年3月末よりサンプル出荷開始いたします。本製品は、株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明)とルネサスが共同開発した技術を適用しています。

 新製品は、当社従来のシリコン(以下Si)素材の製品に比べ約40%の低損失化を実現しており、機器の省電力化に貢献します。サンプル価格は1個あたり5,000円で、量産を2011年10月から開始し、2012年3月以降は今後の展開品を含め月産10万個を量産予定です

 近年、環境保全等のために機器の省電力化が推進され、様々な機器の電源回路で高効率化が求められております。特にエアコン、通信基地局やPCサーバ、太陽光発電などのパワースイッチング回路や、モータの細やかな制御が可能なインバータ回路を搭載した機器においては、電力変換効率の向上による省電力化が強く推進されています。このため、こうした機器の電力変換回路で使用されるダイオードには高速スイッチング化、低電圧化が要求されており、ルネサスはこうしたニーズに対応するため、新たにSiCを採用したダイオードを製品化したものです。

 新製品は、SiC採用により、下記の特長を実現しています。

(1)スイッチングの高速化により、当社比40%の低損失化を実現

当社従来のSi素材製品に比べ、オン状態からオフ状態に切り換えた際に規定の電流値になるまでの時間(逆回復時間(注2))を約40%高速化した15ナノ秒(標準値:測定条件IF=15A, di/dt=300A/s)を実現しました。このため、スイッチング速度を高速化でき、電力損失を当社従来のSi素材製品から約40%低損失化したことになります。

また、高温時にも逆回復時間の劣化が無く、高温環境下においても安定したスイッチング損失の低減を図ることが可能です。

(2)低電圧化を実現

従来のSi素材のファストリカバリダイオードと比較して、新製品のSiC-SBDでは電圧(順方向電圧:VF)が低く1.5Vを実現しています。また、温度依存性が小さいため、高温時にも安定した順方向電圧が得られます。このため、搭載機器の放熱対策部分の小型化に貢献できます。

 今回のSiC-SBD新製品は、業界標準パッケージであるTO-220フルモールド相当の外形を採用し、ピン配置も標準配置を採用しているため、従来のシリコン素材のダイオードを搭載していたユーザのセット基板にも容易に実装することが可能です。

 ルネサスはエアコン、通信基地局やPCサーバ、太陽光発電などの高出力の機器で推進されている省エネ化に貢献できる製品として、今回の新製品を含む600V耐圧・3A~30Aシリーズをラインアップし、続けて1200V耐圧シリーズへの展開を図ります。加えて、今後、積極的な拡販活動と併せて生産能力の拡大をさらに推進してまいります。

 ルネサスはMCUとアナログ&パワーデバイスのトータルソリューションの提供によるユーザへの貢献と、パワーデバイスでの世界トップグループ入りを目指しており、今回のSiC-SBDを高耐圧パワーデバイスの中核とし、周辺の電源コントロールICや高性能IGBT、高耐圧スーパージャンクション MOSFET、フォトカプラ等とのキットソリューションや複合デバイス製品の拡充を進めてまいります。

 新製品の仕様は別紙をご参照下さい。

以 上

(注1)SiC(シリコンカーバイド):

シリコン(Si)よりさらに熱伝導率、許容動作温度、放射線照射、絶縁破壊電界強度等が優れている物質でパワーデバイスの低損失化への期待されている。

(注2)逆回復時間:

ダイオードに規定の順方向電流を流した後、オン状態からオフ状態に切り換えとき、接合に蓄積している少数キャリアの影響で逆電流が流れる。このオフ時から規定の電流値まで回復する時間を表す。

*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


ニュースリリースに掲載されている情報(製品価格、仕様等を含む)は、発表日現在の情報です。 その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご承知ください。

この記事をシェアする