ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)はこのたび、自動車のターンシグナルライトやブレーキライトなどを駆動するインテリジェント・パワー・デバイス (Intelligent Power Device、以下IPD)3品種を製品化し、本日よりサンプル出荷を開始いたします。
IPDとは、スイッチング素子のパワーMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果型トランジスタ)、各種保護機能および自己診断出力機能を実現する制御回路を1つのパッケージに内蔵したものです。
新製品は、12ピンパワーHSSOPのパッケージにオン抵抗(注1)が25mΩ(ミリオーム)の出力を2チャンネル備えた「μPD166011」、同パッケージ採用でオン抵抗60mΩの出力を2チャンネル備えた「μPD166013」、24ピンパワーHSSOPのパッケージにオン抵抗60mΩの出力を4チャンネル備えた「μPD166014」の3品種です。
新製品の最大の特長は、1パッケージでの出力を2つまたは4つへ多チャンネル化している点です。また今回パッケージ、オン抵抗性能、出力数の違いにより3品種を製品化したことで、多様なニーズに応えることができます。
新製品のサンプル価格は、μPD166011が200円/個、μPD166013が160円/個、μPD166014が240円/個となっております。量産は2011年度より順次開始し、量産規模は3品種合計で月産200万個を計画しています。
従来、ライト制御をはじめとする多くの車載制御ユニットには、電気をオン/オフするスイッチとしてメカニカル・リレーが採用されておりました。しかし、メカニカル・リレーは電磁石により物理的に接点を動かしてスイッチングを行うため、摩耗が生じるため信頼性に欠ける、部品が大きいため車輌が重くなる、といった課題がありました。
ルネサスはこうした課題を解決すべく、半導体スイッチで電気的なオン/オフを行うIPDと呼ばれる車載用パワーICの開発を進め、2006年から市場投入してまいりました。
新製品は、このようなニーズに応えるために製品化したもので、当社従来品「μPD166009」、「μPD166010」と組み合わせることにより、ウインカーやブレーキライト以外にヘッドライト、コーナーリングランプ、フォ グランプなど特性の異なる各種外装用ライトの駆動も可能になります。
新製品の特長の詳細は次のとおりです。
(1)1パッケージでの出力多チャンネル化により制御ユニット小型化に貢献
従来、スイッチング素子のパワーMOSFETと制御回路は異なるプロセスを採用しているため2チップ構成であったのに対し、新製品は高電圧・大電流に強い新規プロセスの採用により1チップ化を実現。これにより、当社従来品はTO-252パッケージに1チャンネル出力内蔵であったのに対し、特にμPD166011およびμPD166013はパッケージサイズがほぼ同等の12ピンパワーHSSOPに出力を2チャンネル内蔵。したがって新製品は従来品の半分の数でライト駆動回路を構成できるため実装面積の低減および制御ユニットの小型化に貢献できる。
(2)多様な市場ニーズに応えるためパッケージ、オン抵抗性能、出力数の違いによる3品種を製品化
新規パッケージ12ピンパワーHSSOPで、オン抵抗が25mΩと60mΩの出力を2チャンネル備えた2製品をラインアップ。例えば、制御ユニットの開発段階でライトを駆動する 負荷の条件が変わり、より低オン抵抗の製品が必要になった場合、同一パッケージかつピン互換性を有するため、基板を変更することなく置き換えが可能。
また、10W(ワット)/21Wクラスのライトを駆動するオン抵抗60mΩの製品は、さらなる実装面積削減に寄与するため4チャンネル出力品もラインアップ。これら2チャンネル品、4チャンネル品のハイサイド型(注2)IPDの製品化により、多様化するライトの数や種類にも柔軟に対応可能。
(3)高い信頼性を確保
自動車の外装ライトアプリケーションの場合、ライトが車体外周部に設置されることから、制御ユニットからライトまでのワイヤハーネスの距離が長く、負荷ショート状態に陥る可能性がある。このような場合を想定し、負荷ショート状態による大電力が印加されるIPDには、断続的に長時間続く負荷ショート状態に対し、高いロバスト性(注3)が要求されている。
新製品は、想定される負荷ショート状態において異常状態の判定基準が最適化されるように制御回路部を改善することで高ロバスト性を実現。これにより、AEC-Q100準拠の負荷ショート信頼性試験(AEC-Q100-012)にて最上級グレードAを実証。
ルネサスは、新製品が環境保全や安全性への意識の高まりを踏まえ、効率良くライトを制御するとともに、燃費の向上に向けた車輌の軽量化といった環境に優しい自動車の開発、安全な自動車の開発に貢献できる製品と位置づけ、今後さらに豊富な保護機能を搭載する製品の開発を推進してまいります。
新製品の主な仕様は別紙をご参照下さい。
以 上
(注1)MOSFETがオン状態で動作した場合の抵抗のこと。抵抗が低いほど損失を低減でき、大きな電流を流すことができる。
(注2)電源と負荷との間にIPDを設置し、スイッチングを行う構成。
(注3)長時間かつ継続的または断続的に続く負荷ショートなどの異常状態に対する耐久性。
*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。
ニュースリリースに掲載されている情報(製品価格、仕様等を含む)は、発表日現在の情報です。 その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご承知ください。