電子回路入門:1 of 3
私たちの身の回りにある電子機器は電子回路に電気が流れることで制御されて動作します。
電子回路は様々な素子を配線で組み合わせることにより、単純な動作から複雑な動作までを実現することが可能です。
電子回路を理解するために、構成する素子の働きを順番に理解していきましょう。
電子回路に欠かせない受動素子
抵抗やコンデンサ、コイルなどは供給された電力を消費・蓄積・放出する素子で、電力の増幅や整流といった能動動作を行わないために受動素子と呼ばれています。
抵抗の働き
抵抗は抵抗器とも呼ばれ、電流の流れを妨げることにより、電流の制限や電流の変化を電圧に変換する、任意の電圧をつくりだすといったことに使われます。
抵抗の値はΩ(オーム)という単位が用いられ、抵抗値が大きい程電気の流れを妨げる力が大きくなり電流は少ししか流れません。
抵抗の両端に電圧をかけると電流が流れ、この電流は電圧に比例し、抵抗の抵抗値に反比例します。これを「オームの法則」といいます。オームの法則を利用することで回路における電流、電圧、抵抗の値を求めることが可能です。
コンデンサの働き
コンデンサは、電気を蓄えたり(蓄電)、蓄えた電気を放出する(放電)働きがあります。コンデンサの容量はキャパシタンス(静電容量)と呼ばれ、単位はF(ファラド)で表されます。
また、コンデンサは誘電体(絶縁体)を電極で挟む構造のために直流電流を通しませんが、交流電流を印加すると蓄電と放電現象を繰り返すために電流が流れます。「交流のみを流す」これもコンデンサの役割です。
コンデンサに直流電流を流すと、直後には電流が流れ電源のプラス側には正の電荷、マイナス側には負の電荷が充電(帯電)されます(図1 過渡状態)。コンデンサが持つ静電容量一杯まで電荷が充電(帯電)されると電流は流れなくなります(図2 定常状態)。
一方、コンデンサに交流電圧を流すと電流の向きが常に変化するので、コンデンサの充電と放電が繰り返されます(図3)。これを誘電体の中を交流電流が流れるのと同じとみなして「交流電流を通す」と考えます。この電流は変位電流と呼ばれています。交流に対する抵抗は容量性リアクタンスと呼ばれ、単位はΩ(オーム)です。
コイルの働き
コイルはインダクタとも呼ばれます。コイルは導線を巻いた部品です。導線に流れる電流によって生まれる磁場にエネルギーを蓄えることができます。その容量はインダクタンスと呼ばれ、単位はH(ヘンリー)です。
導線には電流の流れる方向の右回りに磁界が発生します(右ねじの法則)。導線を巻いたコイルは磁束の方向が揃います。このコイル内の磁界が変化すると電力(誘電電流)が磁界の変化を妨げる方向に流れます。これを、レンツの法則といいます。そのため、コイルは交流電流を通さず、直流電流のみを流す目的で使用されます。
導体に電流を流すと、電流の向きに対して右ねじの回転方向に磁場が生まれます。(電流I 磁場B)
フィルタ回路-HPFとLPF
不要な信号を取り除いて特定の周波数成分のみを取り出す回路をフィルタ回路と呼びます。例えば、抵抗(R)とコンデンサ(C)を直列につないだRC直列回路の抵抗にかかる電圧(Vr)を回路の出力として取り出すと、入力電圧信号の高い周波数成分だけを取り出して低い周波数成分は減衰して出力されません。この性質のことをハイパスフィルタ(HPF:High-pass filter)と呼びます(図6)。
一方、RC直列回路のコンデンサにかかる電圧(Vc)を回路の出力として取り出すと、入力電圧信号の低い周波数成分を取り出すことができ、高い周波数成分は減衰して出力に現れません。このフィルタ回路はローパスフィルタ(LPF:Low-pass filter)と呼ばれます(図7)。
次回は、自ら電気の波形や周波数などを制御または変化させる能力を持った素子-ダイオードとトランジスタ、FETの基礎知識を学びます。
電子回路入門
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