電子回路入門:3 of 3
前回の半導体に続いて、今回はオペアンプとそれを用いた増幅回路とコンパレータなどについて理解していきましょう。
使い方いろいろ、便利なIC — オペアンプ
オペアンプは、演算増幅器とも呼ばれ演算に利用できる増幅回路です。オペアンプは入力したアナログ信号を増大させたり減少させたりといった増幅だけでなく足し算や引き算、積分、微分など実行できます。このようにオペアンプは幅広い用途に使用できるので非常に便利なICです。
回路図記号は、図1のように表され、非反転入力端子Vin(+)と反転入力端子Vin(-)の2つの入力と、出力端子Voutの1つの出力を備えています。回路図記号では省略されていますが、実際のオペアンプには電源端子(+電源、-電源)やオフセット入力端子などを備えます。
オペアンプの主な機能は、入力した2つのアナログ信号の差を非常に高い増幅率で増幅して出力することです。この入力の電圧差を増幅することを差動増幅といいます。Vin(+)の方が高い場合の出力はプラス方向に、Vin(-)の方が高い場合はマイナス方向に増幅し出力します。さらに、入力インピーダンスが非常に大きいことや出力インピーダンスが非常に小さいという特徴を備えています。
入力に少しでも差があると、オペアンプの非常に高い増幅率によってその出力電圧はすぐに最大値または最小値(電源電圧)に張り付いてしまいます。そこで、通常は負帰還(ネガティブフィードバック)をかけて使用します。負帰還を用いた増幅回路の例を見てみましょう。
オペアンプの基本(1) — 反転増幅回路
反転増幅回路は、図2のように入力信号を増幅し反転出力する機能を有しています。この「反転」とは、符号をかえることを表しています。この増幅器には負帰還が用いられています。そもそも負帰還とは、出力信号の一部を反転して入力に戻すことで、この回路では出力VoutがR2を経由して反転入力端子(-)に接続されている(戻されている)部分がそれに当たります。
この反転増幅回路の動作を考えてみましょう。オペアンプには、出力が電源電圧に張り付いていないなら、反転入力端子(-)と非反転入力端子(+)には同じ電圧が加えられている、つまり仮想的にショートしていると考えることができるイマジナリショートという特徴があります。そのイマジナリショートと非反転入力端子(+)が0Vであることから、点Aは0Vとなります。これらの条件からR1に対してオームの法則を適用するとI1=Vin/R1となります。
また、オペアンプは入力インピーダンスが非常に高いため反転入力端子(-)にほとんど電流が流れません。そのため、I1は点Aを経由してR2に流れるためI1とI2の電流はほぼ等しくなります。これらの条件からR2に対してオームの法則を適用するとVout=-I1×R2となります。I1にマイナスが付くのは0Vである点AからI2が流れ出ているからです。見方を変えると、反転入力端子(-)の入力電圧が上昇しようとすると出力は反転してマイナス方向に大きく増幅されます。このマイナス方向の出力電圧はR2を経由し反転入力端子に接続されているので反転入力端子(-)の電圧の上昇が抑えられます。反転入力端子が非反転入力端子と同じ0Vになる出力電圧で安定します。
さて増幅回路なので入力と出力の関係から増幅率を求めてみましょう。増幅率はVinとVoutの比となるのでVout/Vin=(-I1×R2)/(I1×R1)=-R2/R1となります。増幅率に-が付いているのは波形が反転することを示します。
この式で特に注目すべき点は、増幅率がR1とR2の抵抗比だけで決定されることです。つまり、抵抗を変更するだけで容易に増幅率を変更できるのです。このように高い増幅度を持つオペアンプに負帰還をかけ、増幅度を抑えて使うことで所望の増幅度の回路として使うことができます。
オペアンプの基本(2) — 非反転増幅回路
反転増幅回路に対して、図3のような回路を非反転増幅回路と呼びます。反転増幅回路との大きな違いは、出力波形と入力波形の位相が等しいことと、入力が非反転入力端子(+)に印加されていることです。反転増幅回路と同様に負帰還を用いた回路です。
この回路の動作を考えてみましょう。まず、イマジナリショートによって非反転入力端子(+)と反転入力端子(-)の電圧はVinとなります。したがって、点Aの電圧はVinです。R1に着目してオームの法則を適用するとVin=R1×I1となります。また、オペアンプの2つの入力端子に電流がほとんど流れないことからI1=I2となります。次に、Voutは、R1、R2の電圧を加算したものとなるので、式で表すとVout=R2×I2+R1×I1となります。以上の式を整理して増幅率Gを求めると、G=Vout/Vin=(1+R2/R1)となります。
この回路は、出力と入力が反転しないので位相が問題になる用途で用いられます。
さらにこの回路中のR1を削除して、R2の抵抗を0Ωもしくはショートすると増幅率が1のボルテージフォロア回路になります。特にインピーダンス変換やバッファ用途によく用いられます。
入力値の判定 — コンパレータ
コンパレータは比較器とも呼ばれ、2つの電圧を比較して出力に1(+側の電源電圧、図ではVDD)か0(-側の電源電圧)を出力するものです。入力が一定の値に達したかどうかを検出する場合などによく用いられます。オペアンプで代用することもできますが一般には専用のコンパレータICを使います。コンパレータはオペアンプと同じ回路図記号(シンボル)を用います。
コンパレータの回路は図4のようになります。この回路の動作をみてみましょう。まず、正帰還も負帰還もないことに注目してください。VinとVREFの差を増幅しVoutから出力します。例えば、VREFよりVinの方が高いと増幅され出力Voutは、+側の電源電圧まで上昇して飽和します。次に、VREFよりVinの電圧が低いと出力Voutは-側の電源電圧まで降下して飽和します。
この動作によってVinとVREFを比較した結果がVoutに出力されることになります。
実際は、図4の回路にヒステリシス(誤作動防止用の電圧領域)をもたせ図5のような回路にしてVinに多少のノイズがあっても安定して動作するようにするのが一般的です。
3回に渡って掲載した電子回路入門は今回で終了です。要点のみに絞って復習しましたが、いかがだったでしょう。ルネサスの開催するセミナー「電子回路入門コース」では実際に測定器を使って演習形式で学ぶことが可能です。詳しくはコチラ。テキストの一部が閲覧できます!
電子回路入門
- 受動素子
- ダイオード, トランジスタ, FET
- オペアンプ, コンパレータ