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マイコンの周辺回路

マイコン入門:2 of 6

組み込みシステムの技術者に必要なマイコンの基礎知識を解説しています。前回のマイコンの動作概要に続いて、今回はマイコンの動作に必要なハードウェア(周辺回路)について学びます。そして、いよいよ、次回はマイコンを動かすことにチャレンジします!

「動力」―電源回路

前回は、マイコンの基本構成と動作を説明しました。大まかに、マイコンの動く仕組みが理解できたと思います。今回は、マイコンが動作するために必要なハードウェア(周辺回路)を、具体例を参照しながら解説しましょう。

ルネサスの新世代汎用マイコン、「RL78ファミリ(RL78/G14)」を例にします。

Aマイコンの動作には、いままで学んださまざまな電子回路と同様に、電源の供給が必要です。そのため、マイコンの外部に電池などの電源を接続します。

下の図1は、「RL78ファミリ(RL78/G14)」の64端子パッケージの端子配置です。電源端子は、13番/14番端子のVSS/EVSS0と15番/16番端子のVDD/EVDD0で、

  • 13番端子のVSSと14番端子のEVSS0をGNDに
  • 15番端子のVDDと16番端子のEVDD0をプラス側の電源に

を接続します。

EVDD0とEVSS0は端子向けの電源供給端子です。マイコンのチップサイズが大きくなると、安定に動作させるため、複数の電源端子があることが一般的です。

「RL78ファミリ(RL78/G14)」のデータシート(ハードウェアマニュアル)を見ると、民生用途向けは「電源電圧:VDD = 1.6~5.5 V」と表記されています。これは、電源電圧が1.6Vから5.5Vの間で、マイコンの動作を保証していることを表しています。この電圧を動作電源電圧と呼びます。マイコンによっては、推奨動作電圧と表記している場合もあります。

図1:「RL78ファミリ(RL78/G14)」(64ピン)の端子接続図

図1:「RL78ファミリ(RL78/G14)」(64ピン)の端子接続図

それでは、「RL78ファミリ(RL78/G14)」の電源接続例を見てみましょう(図2)

  • 15番端子に接続しているC1はバイパスコンデンサと呼ばれます。マイコンの動作時に瞬間的に大電流が流れることにより、電源電圧が降下してマイコンが誤動作することを防ぎます。バイパスコンデンサには、一般的に0.01μ~0.1μF程度の容量を備えたセラミックコンデンサを用います。
  • 「RL78/G14」の内部回路の動作電圧は電源電圧から内蔵のレギュレータを用いて降圧し、1.8または2.1Vとしています。その内蔵レギュレータにも安定動作のためにコンデンサを接続します(12番端子に接続しているC2)。
図2:「RL78ファミリ(RL78/G13)」(20ピン)の電源回路例

図2 「RL78ファミリ(RL78/G13)」(20ピン)の電源回路例

「指揮者」―発振回路

デジタル回路入門③で解説したように、順序回路はクロック信号(CK)の立ち上がり(信号がL→Hに変化すること)や立ち下り(信号がH→Lに変化すること)に同期して動作します。マイコンも順序回路で構成されているので、外部に発振回路を接続してクロックを供給します。このようにマイコンの外部から入力するクロックを「外部クロック信号」と呼びます。

図3:発振回路の役割

図3:発振回路の役割

下の図3は、発振回路をマイコン(RL78)に接続した場合の例です。水晶振動子をX1とX2に接続しています。

外部クロック信号をもとに、マイコン内部では二つのクロック発振器を動作させます。

  • メインクロックは、主にCPUの動作クロックとして利用
  • サブクロックは、主に周辺回路やリアルタイムクロックの動作クロックとして利用

内蔵周辺機能が豊富な「RL78ファミリ(RL78/G14)」では、周波数偏差1%の高精度で動作する発振回路を内蔵しています。そのため、外部からクロックを供給する必要がありません。このようなマイコンが内蔵するクロック発生回路を「オンチップオシレータ」と呼びます。外部の発振回路が必要ないため、設計の手間やコストが削減可能です。

このように「オンチップオシレータ」を備えるならば、「外部からクロックを供給する必要がない」と思われるかもしれません。しかし、時計などの用途に用いたい場合は、温度による周波数ずれが少なく、より精度の高い周波数が実現できる水晶振動子を使用します。

「目覚まし時計」―リセット回路

マイコンに電源を入れた直後は、マイコンの内部状態が不安定でCPUが正常に動きません。そのため、リセットと呼ばれる、マイコンの状態を初期化する手段が必要となります。マイコンにはリセット信号入力端子があり、その信号をアクティブ(Low)レベルにすることでマイコンをリセットします。つまり、リセット信号を入力することで、マイコンをスッキリと目覚めさせるのです。

リセットの手順を解説しましょう(図4)。リセットは、マイコンに安定したクロックと電源が供給されている状態で、リセット信号をLowレベルにする必要があります。その状態を実現するために、電源の立ち上がりに対して、少し遅れて立ち上がってくる回路をリセット入力端子に接続します。この回路は、電源の立ち上がったあとに抵抗を介して少しずつ電流がコンデンサに流れるため、徐々に電圧が上昇します。これにより、電源の立ち上がったあと、一定時間が経過するとリセットが解除される回路が実現できます。このような外部回路を「パワーオンリセット回路」と呼びます。

上の図4で、パワーオンリセット回路の左にある回路は「マニュアルリセット回路」と呼ばれるものです。手動でスイッチを押すことで、マイコンを初期化する回路です。

図4:簡易的なリセット回路とその波形

図4:簡易的なリセット回路とその波形

一般的なマイコンでは、リセット信号をある一定時間Lowレベルに保持しなければなりません。この時間は、ハードウェアマニュアルやデータシートに記載されています。その時間を考慮して抵抗RとコンデンサCを決定する必要があります。

「RL78ファミリ(RL78/G14)」は、電圧検出機能がマイコンに内蔵されています。この電圧検出機能を使用すると、供給電圧の検出と必要なリセット時間の保持を自動的に行います。そのため、動作電圧以上電源を供給してあげるだけで、きちんと初期化された状態で目覚めてくれます。便利ですね!

 

次回は「マイコン入門(3)」です。

開発環境を学びながら、実際にマイコンを動かしてみましょう!


※この記事は2015年3月13日に改訂しました。

マイコン入門

  1. マイコンの基本構成、動作
  2. マイコンの周辺回路
  3. マイコンの開発環境
  4. マイコンのハードウェア制御
  5. マイコンのプログラミング
  6. スタータキットなしで始められる!シミュレータ活用開発術