ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)はこのたび、最先端の40nm(ナノメートル:10億分の1メートル)プロセスを採用した車載向けフラッシュメモリ内蔵マイコン「RH850ファミリ」を製品化しました。その第一弾製品として、ボディ集中制御をはじめ、エアコン制御、ドア、ワイパー、シート制御等を行うボディ分野向けに「RH850/F1xシリーズ」3グループを製品化し、50を超える製品を提供します。
「RH850/F1xシリーズ」は、低消費電力かつ高性能という特徴を活かし(1)HEV/ EV車をはじめ次世代車に要求される様々な車載ボディ分野向けシステムに対応すべく3グループ「RH850/F1L」、「RH850/F1M」、「RH850/F1H」で構成し、48ピンの小型製品、当社従来比4倍の大容量フラッシュメモリを内蔵した製品、およびデュアルコア製品を新規追加するなど、豊富なラインアップで次世代システムに最適な製品を提供します。(2)40nmプロセスと当社独自のMONOS構造フラッシュメモリ(注1)により、「RH850/F1Lグループ」では 80MHz動作時に40mAと消費電力を当社従来比で約30%低減、従来からの高信頼性を継承しつつ低消費電流を実現しています。(3)今後さらに重要となる車載ネットワーク機能も強化し、CAN/LIN、FlexRay、Ethernetを標準搭載し、1製品あたりの搭載数を増加(例:LIN搭載数は最大18チャンネル)。また、データの暗号化機能を追加する等により、システムの更なる高機能化に貢献します。
「RH850/F1xシリーズ」はこれら3つの特長で、高性能、省電力、更に安全なボディ制御システムへ柔軟に対応します。
今回は、シリーズ第一弾製品として「RH850/F1Lグループ」のサンプル出荷を2013年度第一四半期より順次開始いたします。そして量産を2014年度から順次開始し、2015年度には本グループ合計で月産300万個を計画しています。
背景
近年、CO2排出量削減等、環境保護への意識の高まりとともに、HEV/EV車の普及、またガソリン車/ディーゼル車でもアイドリングストップ等のエネルギーセーブの取組みが進んでいます。この環境技術に電子制御は不可欠で、高機能化とともに制御に必要な電力消費の削減も重要課題になっています。また、車載ネットワークも多様化し、車外からのアクセスポイントを持つようになりセキュリティ対策も必要です。このように進歩する制御システムを効率よく開発するためにシステムのプラットフォーム化も進められております。こうした市場ニーズに対応すべく、当社では業界に先駆けて40nmプロセスの内蔵フラッシュメモリを開発し、今回その技術を搭載した「RH850」を製品化しました。そして第一弾製品として、特に低消費電力および、豊富な機能を小型外形に搭載することが要求される車載ボディ制御システム向けに「RH850/F1xシリーズ」を製品化したものです。本シリーズでは、パッケージ、内蔵フラッシュメモリ容量、周辺機能の種類で組み合わせる製品群を準備し、車載分野の幅広い様々なニーズに対応します。
特長
「RH850/F1xシリーズ」の主な特長は以下の通りです。
(1)用途にあわせた3グループを幅広いラインアップで展開し、スケーラビリティを実現
「RH850/F1xシリーズ」はあらゆるボディ制御システムに最適な製品を提供すべく、3種のグループで構成。しかも全グループで同一アーキテクチャのCPUコア、同一の周辺機能を搭載しており、例えば「RH850/F1Lグループ」から「RH850/F1Hグループ」へのマイコンの変更が容易に行えます。また低消費電流を実現するため全製品に電源遮断回路技術を盛り込んでいます。
また、メモリ容量やパッケージ等の違いによる50製品以上を提供する予定であり(当社従来製品「V850E2/Fx4シリーズ」は計33品種)、高いスケーラビリティと幅広い選択肢を提供していきます。
「RH850/F1Lグループ」
パワーウィンドウ制御やLEDヘッドライト等の制御といった小型システム用途向けに、省電力化を実現すべく低消費電流を目標に設計した、最高80MHzで動作可能なCPUコアを搭載。2DMIPS/MHz以上(注2)を実現しながらも0.5mA/MHzの消費電流を達成します。当社従来製品「V850E2/Fx4シリーズ」よりも更に小型の48ピンQFPパッケージを提供することで、実装スペースが限られた制御システムでも32ビットCPUコアによる高性能なシステム制御が実現できます。 また、処理とスタンバイを繰り返す間欠動作では処理時間を大幅に短縮することができるため、16ビットCPU搭載製品に対し、システム全体の消費電力削減に大きく貢献できます。
「RH850/F1Mグループ」
多くの入出力端子を扱うボディコントロールモジュールの制御等の用途向けに高性能と省電力の両立を目指した製品です。最高120MHzで動作可能なCPUコアや浮動小数点演算ユニットを搭載します。100ピンから208ピンまでのパッケージ展開、1.5Mバイトから4Mバイトまでの内蔵フラッシュメモリが選択可能です。
「RH850/F1Hグループ」(開発中)
様々な車載ネットワークから得られる情報を用いて複雑な制御を行う等の用途向けにデュアルコアを搭載した高性能グループです。各コアは独立して最高120MHzで動作しながら内蔵の周辺機能を共有できます。当社従来製品「V850E2/Fx4シリーズ」の内蔵フラッシュメモリ容量を最大2Mバイトから4倍となる最大8Mバイトまで搭載し、パッケージも最大で272ピンBGAパッケージまでを取り揃えます。CAN、LIN、FlexRayのほか、Ethernetも搭載しており、車載ネットワークの複雑な制御、例えば、近年搭載率が増加しているゲートウェイモジュールの制御マイコンとして活用できます。
(2)40nm MONOS構造フラッシュメモリ採用により低消費電流と大容量を両立
「RH850/F1xシリーズ」は、フラッシュメモリ内蔵マイコンで業界最先端の40nmプロセスと、低消費電力かつ高信頼性に実績があるMONOS構造(注2)のフラッシュメモリを採用。これにより、プログラム搭載用フラッシュメモリの容量をシリーズ全体で256Kバイトから8Mバイトまでカバーでき、制御システムの廉価版から高機能版までを最適なメモリサイズでサポート可能です。
また、データ格納用のデータ・フラッシュも搭載しており、64バイト単位で最大12.5万回の書換えが可能です。このため、従来のシステムでは外付けEEPROMに書き込んでいたデータを保持することができますので、外付け部品の削減、基板サイズ縮小に貢献します。
(3)セキュリティや機能安全に対応する新機能を追加
ネットワーク化が進む車載システムにおけるセキュリティ課題の解決に向け、データを暗号化する処理機能(ICU)を新たに搭載。本機能を用いることでシステムの改ざんや車の盗難防止等に役立ちます。また、今後の自動車業界で適用される機能安全規格ISO26262に対応するため内蔵周辺機能の一部に診断機能を取り込みます。例えばA/Dコンバータに内蔵されている自己診断回路は、その変換結果の正誤判断に役立ちます。省電力モードにおいてCPUを起動することなく、マイコン外部からのデジタルおよびアナログ入力信号の変化を監視する機能も当社従来品からチャネル数を増加し、より使い勝手を向上させました。
なお「RH850/F1Lグループ」では、パッケージは48ピンから176ピンのQFPパッケージを揃え、サンプル価格は1個あたり3,000円からとなっています。
ルネサスは「RH850/F1xシリーズ」の開発環境として、統合開発環境「CubeSuite+」とオンチップデバッギングエミュレータ「E1」、フラッシュメモリプログラマを提供いたします。AUTOSAR規格に準拠するソフトウェア製品もサポートしていきます。
新製品の主な仕様は、別紙をご参照ください。
以 上
(注1)MONOSは、「Metal(メタル)−Oxide(酸化膜)−Nitride(窒化膜)−Oxide(酸化膜)-Silicon(シリコン)」の略称。シリコンの上に、酸化膜/窒化膜/酸化膜の3層構造があり、その上に制御ゲート(メタル)が載った、記憶用トランジスタ(メモリセル)の構造のこと。ルネサスでは、MONOS技術を20年以上前からICカード用メモリに搭載している。この実績を元に、ゲート電極を二つに分けた「スプリットゲート(SG)」構造のMONOS技術「SG-MONOS」を開発し、高信頼性・高速動作・低消費電力を実現するSG-MONOS型フラッシュメモリとして、マイコンに内蔵している。
(注2)DMIPS: Dhrystone MIPS(Million Instructions Per Second)とは、コンピュータの演算性能を評価するプログラムDhrystoneによる性能測定値のこと。
*LINはLocal Interconnect Networkの略、CANはController Area Networkの略、で車載LANの通信プロトコルの一種。 FlexRayは車載LANの通信プロトコルの一種。 ISO26262は電気・電子・プログラマブル電子安全関連の機能安全に関する国際規格(IEC61508)の自動車版としてISOより発行された機能安全規格。 AUTOSAR はAutomotive Open System Architectureの略。 ICUは、Intelligent Cryptographic Unitの略。セキュリティを強化のための暗号処理回路。 その他、本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。
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