ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)は、このたび、エアコンなど家電機器等の高速モータやインバータ制御機器向けに、省電力化に貢献する低損失のパワー半導体「高速リカバリーダイオード(以下FRD(注1))内蔵スーパージャンクション構造パワーMOSFET (SJ-MOSFET(注2))」「RJL60S5シリーズ」を製品化しました。パッケージ展開による「RJL60S5DPP」など3製品を9月よりサンプル出荷いたします。
新製品は、(1)高精度スーパージャンクション構造の採用により、高速モータやインバータ制御機器向け600Vのパワー半導体では業界最小レベルの低損失(オン抵抗(注3))150mΩ(標準値)を実現しています。更に(2)FRD内蔵とモータ等の用途にあわせた仕様の最適化により、当社従来のSJ-MOSFETに比べ約3分の1となる150nsまで逆回復時間(trr)(注4)を短縮し、高速化することにより、高速モータ等の用途に使用可能となりました。加えて、(3)スーパージャンクション構造採用による高速スイッチングを実現しながらも、トレードオフの関係にある“スイッチング時におけるリンギング等の誤動作”を防止しています。これらの特長により、高速モータやインバータ制御機器での省電力化と安定動作の両立に貢献いたします。
新製品の量産は2012年12月から開始し、2013年3月には月産50万個を生産する予定です。
背景
近年、環境保全等のために様々な電気機器における省エネルギー化が進められております。特にエアコンなどの家電機器やテレビなどの電源回路では、低損失化、省電力化が強く推進されており、使用されるパワーデバイスにも低損失化が要求されております。そして、従来、エアコンなどに搭載される高電圧の高速モータ、インバータにはパワー半導体の一つで逆回復時間の短いFRDを内蔵したIGBTが主に使用されていましたが、上記のような、より高速な制御による低損失化と安定動作というニーズに対応するため、損失(オン抵抗)が少ないSJ-MOSFETで、かつ高速の逆回復時間(trr)を実現するための高速FRD内蔵製品が求められてきました。
このため、ルネサスは今回、高速FRD内蔵の高精度SJ-MOSFETを製品化したものです。
製品について
新製品の主な特長は以下の通りです。
(1)業界最小レベルの低オン抵抗により、高速モータやインバータ制御機器の省電力化に貢献
当社が他の応用機器向けに実現しているSJ-MOSFETのノウハウを活かし、今回、高速モータやインバータ制御機器向け600Vのパワー半導体では業界最小レベルのオン抵抗150mΩ(標準値)を実現。高速モータ等における省電力化が図れます。
(2)FRD内蔵により逆回復時間を高速化し、高速モータやインバータ制御機器への適用を実現
新製品は、FRDの内蔵とモータ等の用途にあわせた仕様の最適化によりダイオードの逆回復時間(trr)を当社従来品のSJ-MOSFETの約3分の1である150nsまで高速化しています。
(3)高速スイッチングとともにスイッチング時におけるリンギング等の誤動作を防止
表面構造の最適化によるゲートードレイン容量(注5)の最適化により、高速スイッチングとともにスイッチング時におけるリンギング等の誤動作を防止しており、特に高速モータや、インバータ制御機器に多用される3相ブリッジ回路などの低損失化と安定動作の両立に貢献します。
新製品は、業界標準パッケージと同等の、TO-220FP(「RJL60S5DPP」)、TO-3PSG(「RJL60S5DPK」)、LDPAK(「RJL60S5DPE」)を採用しております。サンプル価格は各200円/個です。
ルネサスは、マイコンとアナログ&パワーデバイスのトータルソリューションの提供によるユーザへの貢献と、パワーデバイスでの世界トップグループ入りを目指しており、本「高精度SJ-MOSFET」シリーズを高耐圧パワーデバイスの中核製品シリーズの一つとして位置づけ、今後も強化してまいります。 併せて、モータ、インバータ用途向けに、新製品と当社のローパワーマイコン「RL78ファミリ」や、ミッドレンジマイコン「RXファミリ」等のマイコンや、パワー半導体駆動用のフォトカプラ等とのキットソリューションの拡充を進めるべく、今後、新製品を搭載したリファレンスボードなどを準備し、ユーザにおけるキット評価やセット設計のサポートを進めてまいります。
なお、ルネサスは7月11日から7月13日まで、東京ビッグサイトで開催される「第27回電源システム展」に出展し、新製品をパネル展示いたします。
新製品の仕様は、別紙をご参照ください。
以 上
(注1)FRD:Fast Recoverly Diodeeの略。
(注2)スーパージャンクション構造パワーMOSFET (SJ-MOSFET): スーパージャンクション構造はパワーMOSFETの基本構造の一つ。従来のプレーナ構造と違い、耐圧をさげずにオン抵抗を下げられるため、単位面積あたりのオン抵抗(損失)が低減できる。
(注3)オン抵抗: パワーMOSFETが動作している時の動作抵抗であり、数値が低いほど導通損失を低減できる。
(注4)逆回復時間(trr): ダイオードに規定の順方向電流を流した後、オン状態からオフ状態に切り換える際、接合に蓄積している少数キャリアの影響で逆方向に電流が流れる。 この時、オフしてから規定の逆電流値に回復するまでの時間を表す。
(注5)ゲートードレイン容量(Crss): パワーMOSFETの構造的に付加される容量値で、一般的に小さいほど高速なスイッチングが可能。
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