~最先端ロジックプロセスに混載可能な大容量フラッシュメモリ実現に向けて大きく前進~

2017年12月6日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO:呉 文精、以下ルネサス)は、このたび、回路線幅が16/14nm(ナノメートル:10億分の1メートル)世代以降のフラッシュメモリ内蔵マイコン向けにフィン構造の立体トランジスタを採用したSG-MONOS (注1)フラッシュメモリの大規模動作に成功しました。

 2016年12月に、ルネサスが世界で初めて発表した フィン構造SG-MONOSフラッシュメモリの単体セルの動作確認に引き続き、大規模メモリ動作とその信頼性が実証されたことで、16/14nm世代以降のマイコンに混載可能な100M(メガ)バイト超の大容量フラッシュメモリの実現に向けて大きく前進することができました。

 近年、自動運転車に代表されるクルマの進化やIoT(Internet of Things)を介したスマート社会化が加速しており、より高性能かつ低消費電力を目指して微細なプロセスを用いた最先端の高信頼性マイコンが求められています。このため、ルネサスは、現在量産中あるいは開発中の40/28nm世代のプロセスをさらに先取りし、16/14nm世代プロセスに混載可能なフラッシュメモリの開発を世界に先駆けて行い、高性能・低消費電力の先端ロジックと大容量・高信頼性の微細不揮発メモリの組み合わせによるさらなるマイコンの進化を追及しています。

 昨年、ルネサスは、従来採用してきた電荷トラップ型のフラッシュメモリ技術を応用展開することで、世界初のフィン構造SG-MONOSフラッシュメモリセルの開発に成功したことを報告しました。SG-MONOSフラッシュメモリは、メモリ保持をシリコン基板面に形成した薄いトラップ膜で行うため、三次元立体構造であるフィン構造への展開が比較的容易であり、同じくフィン構造を有する16/14nmのロジックプロセスとの親和性が高いことが特長です。また、電荷トラップ型MONOSフラッシュメモリの特長である優れた電荷保持特性はフィン構造でも損なわれず、従来と同等の信頼性を維持することを確認済みです。

 このフィン構造SG-MONOSフラッシュメモリセルを、16/14nm世代以降のマイコンに内蔵する際に課題となるのは、主にメモリの大容量化に伴う特性のばらつきでしたが、今回ルネサスは、大規模メモリでも動作の検証に成功し、100Mバイト超のフラッシュメモリを混載する高性能・高信頼マイコンの実現に向けて大きく前進しました。

 このたび開発した大規模混載フラッシュメモリ技術で実証できたことは以下のとおりです。

(1)フィン構造メモリアレイを試作し、大規模メモリ動作を実証

 今回の試作に当たっては、フィン構造向けに成膜条件・加工条件・イオン注入条件などのプロセス条件の最適化を行いました。その結果、従来のプレーナ構造と比較してプロセスステップ数を増加させることなく、メモリアレイの試作が可能となり、フィン構造で期待される短チャネル効果抑制・ばらつき低減の効果を、アレイレベルでも安定して得ることができました。これにより、次世代混載フラッシュメモリの100Mバイト超の大容量化に対し目途を得ることができました。

(2)フィン構造メモリアレイ向けに書き込み方式を最適化

 昨年、書き込み電圧を低い電圧から段階的に上昇させるステップパルス書き込み方式(ISSP: Incremental Step Pulse Programing)が、フィン先端部の電界集中によるデバイス特性の劣化に対し有効であることを報告しましたが、今回、この方式をアレイ動作に取り込み最適化を進めることで、高速書き込みと信頼性の両立を図りました。その結果、従来のプレーナ構造よりも高速な書き込み/消去を実現すると共に、データ保存用フラッシュメモリで従来通りの25万回の書き換えを行った後も、書き込み/消去速度にほとんど影響がない結果を得ることができました。

(3)従来と同等の高温データ保持特性をアレイレベルで維持

 車載用途では、高温下でのデータ保持特性が重要です。今回、書き換え動作後に160℃で10年以上の保持時間を維持、従来と同等であることを確認しました。また、フィン構造の特長である急峻なしきい値電圧分布は、160℃の高温下でデータを保持した後もアレイレベルで維持されており、従来の高信頼性を維持したまま、大容量化することが可能であることが確認できました。

 今回の成果は、SG-MONOS構造フラッシュメモリによる、16/14nm世代以降に対応した、100Mバイト超のメモリを搭載し、28nm世代比4倍以上の処理性能を有する高信頼マイコンの実現に向けて大きく前進したことを示すものです。

 現在ルネサスは、SG-MONOS構造フラッシュメモリ技術を適用した40nm世代マイコンを量産中、28nm世代マイコンを開発しておりますが、今回の大規模動作実証を踏まえ、今後、16/14nm世代のマイコンを2023年頃の実用化に向けて開発する計画です。ルネサスは、高性能・高信頼性を備えた大容量の混載のフラッシュメモリの開発を16/14nm以降の世代まで推し進めて、継続的にクルマの進化やスマート社会の実現に貢献してまいります。

 なお、ルネサスは今回の成果を、2017年12月4日から6日まで米国サンフランシスコで開催される「電子デバイス国際会議IEDM 2017(International Electron Device Meeting 2017)」にて、現地時間の12月5日に発表します。

以 上

(注1) MONOSは、「Metal(メタル)-Oxide(酸化膜)-Nitride(窒化膜)-Oxide(酸化膜)-Silicon(シリコン)」の略称。シリコンの上に、酸化膜/窒化膜/酸化膜の3層構造があり、その上に制御ゲート(メタル)が載った、記憶用トランジスタ(メモリセル)の構造のこと。ルネサスでは、MONOS技術を20年以上前からICカード用メモリに搭載している。この実績を元に、ゲート電極を二つに分けた「スプリットゲート(SG)」構造のMONOS技術「SG-MONOS」を開発し、高信頼性・高速動作・低消費電力を実現するSG-MONOS型フラッシュメモリとして、マイコンに内蔵している。

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