~太陽光発電パワーコンディショナやUPSなどの電力変換システム向けに、電力損失を極小化~
2016年3月10日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO:鶴丸 哲哉、以下ルネサス)は、太陽光発電のパワーコンディショナやUPS(無停電電源)システムのインバータ用途向けのパワー半導体として、電力変換損失を極小化し、システムの電力効率を向上する第8世代IGBT (Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ) の「G8Hシリーズ」を新たに製品展開いたします。

 第8世代製品は特に、太陽光発電のパワーコンディショナやUPSシステムに搭載されるインバータ回路用途に最適化するため、プロセス構造に独自のトレンチゲート構造(注1)を採用しました。これにより、IGBT性能指標となる高速スイッチング特性の向上と、飽和電圧Vce(sat)(注2)をの低下による導通損失の低減を両立しました。従来の第7世代IGBTと比べて、性能指数(注3)をを最大30%改善しており、無駄な電力損失を削減し、ユーザシステムの電力効率の向上に貢献します。

 新製品は、650V/40A、50A、75Aの3製品、1250V/25A、40A、75Aの3製品で計6製品のラインアップ用意しており、様々なイン バータ回路方式、出力容量に応じて製品を選択することが可能です。サンプル出荷を本日より順次開始し、サンプル価格は650V/50Aの 「RBN50H65T1GPQ-A0」が330円/個(税別)です。量産は2016年9月より開始し、2017年3月には月産60万個を計画しています。

 太陽光発電システムにおいては、太陽光によって集めた直流(DC)の電流を交流(AC)に変換するインバータ回路を通過する際に、どうしても損失が発生し てしまいます。この電力損失の多くは、パワーデバイスの電力損失が大半を占めており、IGBTの電力損失を少なくすることがユーザシステムの発電性能に直 結します。また、サーバルームやデータセンタで使用されるUPSシステムは、停電をしていないかチェックするため、電力は常時、電力変換回路を経由しなけ ればならず、稼動しているだけで、定常的に電力損失が発生します。この電力損失をいかに低く抑えるかも、IGBTの性能がキーとなっています。

 ルネサスは、この電力変換分野において、低損失IGBTの設計ノウハウを生かし、第8世代の最新IGBTプロセスを開発しました。パワーコンディショナや UPSシステムに最適化したことにより、「G8Hシリーズ」は、1)業界最小レベルの電力損失を実現しました。これにより電力変換回路の電力損失を大幅に 削減することが可能となり、システムの電力効率が向上します。また、2)高速スイッチング性能と相反する低ノイズ特性を実現し、従来はノイズ低減に必要 だった外付けのゲート抵抗を削減可能です。さらに、3)市場ニーズに応えて、高温175℃を保証。さらに高放熱特性であるTO-247パッケージを採用し ています。そして新たに、4)75Aの大電流製品を単体パッケージ化し、高温・高放熱パッケージでセットの電力容量向上を実現します。

 本製品の主な特長は以下のとおりです。

(1) 業界最小レベルの電力損失により、インバータ回路に最適

 従来からの低損失IGBTの設計ノウハウを活用し、独自のトレンチゲート構造を開発。この最新第8世代IGBTのプロセス技術を用いて、IGBT性能指数 である高速スイッチング特性と低飽和電圧Vce(sat)特性の両立を実現。これにより、性能指数を最大30%改善することに成功。さらに、インバータ回 路での電力損失の内訳を分析し、IGBTの2大損失要因である、導通損失とスイッチング損失を最適極小化。電力変換回路の大半を占めるIGBTの電力損失 を大幅に削減することが可能。

(2) 低スイッチングノイズにより、外付けのゲート抵抗を削減可能

 IGBTのノイズ特性は、スイッチングスピードとのトレードオフ指標となっていますが、第8世代IGBTは、スイッチング時にゲートに発生するノイズを大 幅に低減。これにより、ユーザは従来ノイズ低減に必要だった外付けのゲート抵抗を削減でき、部品点数の削減によるシステムの小型化にも貢献。

(3) 高放熱性能TO-247パッケージを採用し、高温175℃での動作を保証

 TO-247パッケージは、裏面が金属で形成され、IGBTの電力損失により発生する発熱を直接パッケージの外部に伝達できるので、放熱性能が優れてい る。特に、本製品は175℃の高温にも対応しているため、大電力伝送により発熱しやすい場所でも安定して使用可能となり、ユーザシステムの性能と信頼性の 向上に貢献。

(4) 75A電流帯の単体パッケージ「TO-247 plus」品を製品化

 従来、75A電流帯は、熱やノイズ、動作品質等の理由から、通常モジュールとして大きなパッケージを使用することが主流だったが、第8世代の低損失な小 チップ化の技術により、1250Vのダイオード内蔵のIGBTとしては業界で初めて「TO-247 plus」として単品パッケージ化を実現。75A電流帯の単体パッケージを採用することで、ユーザはディスクリート部品の回路構成がフレキシブルになり、 大電力化が容易に実現可能。

 今回の新製品は、インバータ用途以外にも、第8世代「G8Hシリーズ」の高速スイッチング性能を生かして、コンバータなどの昇圧回路においても、高い性能 を発揮します。今後は、他の家電機器向けや産業用途向けに順次、第8世代「G8Hシリーズ」をリリースする予定です。また、当社のマイコン等と組み合わせ た最適な産業機器向けソリューションも合わせて提供していきます。

 ルネサスは、IGBTを家電および産業用途の重要部品と位置づけており、今後も新製品を積極的に開発してまいります。

新製品の主な仕様は別紙(84KB) をご参照ください。

第8世代IGBTの製品情報は、https://www.renesas.com/ja/products/power-and-discrete/insulated-gate-bipolar-transistors/1603-igbt.htmlをご覧ください。

以 上

(注1)トレンチゲート構造とは、チップ表面に深く狭い溝(トレンチ)を形成し、その側壁にMOSFETのゲートを形成した構造。セル密度が高められるため、オン抵抗の低減が可能

(注2)飽和電圧Vce(sat) とは、IGBTの性能を示す最も重要な指標で、動作状態におけるコレクタ-エミッタ間の電圧を示し、小さいほど、素子に電流を流した際の導通損失が小さい

(注3)性能指数は、スイッチング損失x Vce(sat)の指標で表すことができる。

*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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