製造業界では「つながる」事で生産性の向上を図ってきました。最近では、生産管理(IT)と生産現場(OT)と融合によってさらなる生産性の向上を目指す、Industrie4.0を一つの例としたIIoT化が進んでおります。その流れの中で、製造機器を繋ぐネットワークは、従来のフィールドバスから、より高速に通信ができるイーサネットへ大きく変化しています。
この産業機器向けのイーサネットにはPROFINETやEtherNet/IPなど複数の通信プロトコル規格がありますが、特に近年の成長著しいのがEtherCATです。下記のグラフの様に過去2年で7%、市場シェアが成長しています。
このEtherCATのシェアが拡大する背景には、使用される分野が製造機器を超えて、ビルディングオートメーションの機器や医療機器、風力発電などの発電設備など、幅広く使用されていることがあります。この様な、拡大し成熟をしていく分野や規格に使用される機器の傾向としては、高性能な製品からより小型で廉価な製品まで幅広く様々なラインアップが必要となっていきます。その為、ルネサスが幅広い製品を開発できるMPUラインアップを揃え、その開発環境を提供します。
その中に、EtherCATの、ニーズに応えるべく、高速かつ高精度にリアルタイム制御が可能な、EtherCAT通信対応のMPU「RZ/T2L」をラインアップとして加えました。
このRZ/T2Lは、上位製品であるRZ/T2Mや産業イーサネット通信向けのRZ/N2Lから、ハードウェアアーキテクチャを継承しつつ、前述のように成長著しいEtherCAT通信市場に重点をあてた仕様になっています。メインCPUは、RZ/T2Mと同じく最大800MHz で動作するArm® Cortex®-R52を搭載しております。さらに周辺機能もRZ/T2Mと同様となっており、高速高精度なリアルタイム制御を実現します。そして産業通信部分はEtherCATに絞り、市場実績のあるBeckhoff社製EtherCATスレーブコントローラを搭載しました。
この様に搭載機能を最適化する事で、ACサーボモータなどに要求される高速処理と高いリアルタイム性を確保するEtherCAT通信の両方を可能にし、そのうえでRZ/T2Mに比べ面積にて最大50%の小型化を実現しましたので、小型製品を開発することを貢献できます。
また、EtherCATのポート数は最大3ポートまで使用でき、EtherCATの分岐スレーブにも対応します。これによって、分岐配線による可用性と柔軟性が向上し、ネットワークの省配線が可能な機器向けの開発に利用できます。
さらに、RZ/T2L向けのソフトウェア開発環境も、RZ/T2M, RZ/N2Lや他のMPUやMCUと同じくFlexible Software Package(FSP)を提供し、ソフトウェア資産の流用を容易にしています。製品モデル毎にMPU,MCUを変更した場合にも、ゼロからソフトウェアを設計する必要が無く、ソフトウェアの開発期間を大幅に削減することが可能です。
本製品のリリースによって、高精度制御/マルチプロトコル対応のRZ/T2Mから、小型/EtherCAT対応のRZ/T2L、そして通信用のRZ/N2Lと、ラインアップを拡充しました。ソフトウェア資産や開発環境をスケーラブルに活用できますので、様々な市場ニーズに対応が必要な機器開発を加速することに寄与いたします。
詳しくは、RZ/T2L・Renesas Starter Kit+ for RZ/T2L・ウイニング・コンビネーションソリューションをご参照ください。