ルネサスの津田と申します。前回のブログに続き、2回目の投稿となります。
ルネサスは、車載グレード・マルチセル・リチウムイオンバッテリ制御システム評価キット(ISL78714BMS5XBEKIT1Z, ISL78714XB-EVKIT1Z)を提供しており、ワイヤレスバッテリマネジメントシステムを検討中です。
私は、バッテリー制御システム評価キットのサンプルアプリケーションのソフトウェア、モデルの開発、およびワイヤレスバッテリマネージメントシステムのPoC (Proof of Concept)モデルのサンプルアプリケーションソフトウェアの開発に携わっています。
本ブログでは、バッテリーのセル数の観点から、バッテリーマネジメントシステムのトレンド、課題および施策を説明します。
1. バッテリーパックとバッテリーマネジメントシステム
バッテリーパックは、EVを駆動するための電力を供給します。パックは、複数のセルで構成されます。1セルの電圧は、数Vであり、パック電圧は、数100Vになります。例えば1セル3.5V、1パック96セル直列の構成において、パック電圧は、3.5 * 96 = 336Vになります。
バッテリーマネジメントシステムの機能は、バッテリーのセル電圧、パック電流、温度を監視すること、バッテリーの各セルの電圧を均等化 (この機能は、セルバランスと呼ばれます)をすること、バッテリーパックのリレーを制御すること、監視した値からバッテリーの充電率、劣化率などを算出することです。
2. バッテリーのトレンド
バッテリーのトレンドは、大きく2つあると考えています。1つは、航続距離を延ばすための大容量化です。もう1つは、高効率のための高電圧化です。セル数の観点からみると、大容量化は、並列にセル数を増やし、高電圧化は、直列にセル数を増やします。
以上より、バッテリーパックのセル数は、増加する傾向にあると考えています。
3. バッテリーマネジメントシステムのトレンド
バッテリーパックのセル数増加の観点より、バッテリーマネジメントシステムのトレンドは、以下であると考えています。
1つのセルモニターに接続可能なセル数は、限られているため、セルモニターの数が、増加します。このため、セルモニター間のワイヤ、コネクタが、増加します。
4. バッテリーマネジメントシステムの課題
セルモニター間のワイヤ、コネクタが、増加するとき、課題は、2つあると考えています。
1つは、パックの分割などのレイアウトの変更により、ワイヤの長さが伸び、コスト、重量が増加すること。もう1つは、ワイヤの断線、コネクタの接触不良などの障害が増加することです。
5. バッテリーマネジメントシステムの施策
2つの課題に対する施策は、マイコンとCell Monitor間の通信を有線から無線に変更することと考えています。
上記のようなバッテリーマネジメントシステムは、ワイヤレスバッテリーマネージメントシステム (wBMS)と呼ばれます。
ワイヤレスバッテリーマネージメントシステムにおいて、どの無線規格が、よいのでしょうか?通信距離の観点において、無線通信は、短距離無線通信、PAN (Private Area Network)、LAN (Local Area Network)、MAN (Metropolitan Area Network)、WAN (Wide Area Network)に分類されます。このうち、ワイヤレスバッテリーマネージメントシステムは、PANに分類されます。また、複数の無線規格が、PANに存在します。たとえば、ZigBee、Bluetooth®、Bluetooth® Low Energy (BLE)です。このうち、通信速度、消費電力の観点より、BLEが、ワイヤレスバッテリーマネージメントシステムにふさわしいと考えています。
以上より、ワイヤレスバッテリーマネジメントシステムは、以下のような構成になると考えています。
現在、上記のシステムでPoCのソフトウェアを作成中です。PoC作成で抽出した課題の1つは、MCUとCell Monitor間の通信時間です。こちらについては、次回のブログ、またはデモでご説明できればと思います。