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モータアプリケーションの高効率化と小型化を実現するために

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Takeo Mimura
Takeo Mimura
Senior Staff Engineer
掲載: 2023年5月30日

現代社会においては、持続可能な社会の実現に向けて、地球規模の環境問題を解決するために、エネルギーの効率的な利用が重要視されており、省エネ技術は世界的にますます注目されています。機器の中でも電力消費が大きいモータは、高精度なインバータ制御を行うことで電力損失を減らし省エネ化に貢献することができます。

このような背景の中、ルネサスはこのたび、RAファミリのモータ制御用製品のラインアップにRA4T1グループ、RA6T3グループを新たに追加しました(図1)。高性能で小型パッケージのラインアップは、スペースに制約がありつつも高精度なインバータ制御を必要とする民生や産業などのアプリケーションに最適です。機器の低消費電力化を実現するRA4T1グループ、RA6T3グループは、消費エネルギーの低減、地球環境の改善に貢献します。

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RA4T1 / RA6T3 Group Lineup
図1:RA4T1,RA6T3グループのラインアップ

RA4T1RA6T3は、1系統のインバータ制御用に性能、機能、価格のバランスを最適化した製品グループです。最大200MHz(RA4T1は100MHz)で動作するArm® Cortex®-M33コアを搭載し、高精度なインバータ制御を実現するための機能として、ハードウェアアクセラレータの三角関数ユニット、相補PWM出力に対応した16ビットタイマ、3チャンネル専用サンプル&ホールド機能を備えた12ビットA/Dコンバータ、12ビットD/Aコンバータ、プログラマブルゲインアンプ、コンパレータを搭載しています。インバータ回路を保護する安全機能として、PWM出力を遮断するポートアウトプットイネーブル機能も搭載しています。通信インタフェースとして、USB2.0 FS Device (RA6T3のみ)、CAN FD、I3Cなどを搭載しています。

性能、機能、価格の最適なバランスを実現したRA4T1グループ,RA6T3グループは、民生や産業の様々なインバータ制御機器に用いることが可能です。例えば、RA4T1グループの最小パッケージは5 x 5㎜の32ピンQFNで、これは小型の電動工具などに最適です。また、より高性能のRA6T3グループは、高速リアルタイム制御と通信機能を同時に実行する能力を備えており、モータ制御と表示パネルとの通信が必要なe-bikeなどのアプリケーションに最適です。そのほかにも、掃除機、IH調理器、洗濯機、ファン、ポンプ、汎用インバータ、サーマルプリンタ、小型ロボットなどにも最適です。

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Use Cases for RA4T1 and RA6T3 Groups
図2:RA4T1グループ,RA6T3グループのユースケース

ここからはRA4T1グループ、RA6T3グループの評価環境についてご紹介します。
MCUの統合開発環境としてはRAファミリ共通で使用できるe² studio、Keil® MDK、IAR EWARMを使用できます。また、RA ファミリを用いた組み込みシステムを開発するためのソフトウェアパッケージとして、BSP、HALドライバ、モータ制御用ミドルウェア、各種組み込みOSなどを含むFlexible Software Package(FSP)を提供しています。FSPを活用することで複雑なソフトウェア実装が容易になり、ソフトウェア開発の短縮に貢献します。

モータ制御の評価を簡単に行うことができる開発キットとしてMCK-RA4T1,MCK-RA6T3を提供しています。同梱しているCPUボード、インバータボード、BLDCモータと後述するサンプルコードを組み合わせることでモータ制御の評価が可能です。また、CPUボード単体でも、MCUの周辺機能の評価が可能であり、PMODコネクタも実装しているため、センサモジュールや無線通信モジュールなどを接続することができ、拡張性に優れています。

また、モータ制御用ソフトウェア開発支援ツールとしてQE for Motorを提供しています。QE for Motorはモータ制御用ソフトウェア開発に必要な設定やチューニング、分析などがワークフロー(図3左上)に従って簡単に操作でき、FSPと連動して階層構造をもつ構造図(図3右上)を確認しながら効率的にモータ用ミドルウェア及びドライバの設定が可能です。

さらにモータ制御開発支援ツールのRenesas Motor Workbenchと連携しています。これにより、モータ制御信号をPC上でオシロスコープの様に波形表示したり、モータを止めることなくモータ制御変数をGUI上で更新することなど(図3左下)、シームレスな環境でのソフトウェア開発が可能となり、お客様の開発期間短縮に貢献します。

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RA4T1 / RA6T3 Evaluation Environment
図3: 評価環境

さらに下記のリストは、本環境で動作するモータ制御用サンプルコードとそのアプリケーションノートです。今後も拡充を予定しています。

アプリケーションノート:

  • 永久磁石同期モータの3シャントセンサレスベクトル制御
  • 永久磁石同期モータの1シャントセンサレスベクトル制御
  • 永久磁石同期モータのエンコーダベクトル制御
  • 永久磁石同期モータのホールセンサ利用120度通電制御
  • 永久磁石同期モータのセンサレス120度通電制御
  • 永久磁石同期モータの誘導センサ使用ベクトル制御

是非、開発キットであるMCK-RA4T1,MCK-RA6T3やモータ制御用ソフトウェア開発支援ツールであるQE for Motorを動かしてみてください。これら開発環境の使いやすさや、RA4T1グループ、RA6T3グループがモータ制御に優れているMCUであることを実感して頂けると確信しています。

テクニカルドキュメントやサンプルに関する、より詳しい情報はMCU、キットの製品ページ参照ください。

ウイニングコンビネーション

MCUだけでなく、ゲートドライバや電源ICなどのルネサス製品を活用したトータルソリューションとしてウイニングコンビネーションも提供しています。

Arm® コアベースの MCU に加えて、ルネサスはさまざまなモータ制御アプリケーションをサポートするさまざまなプラットフォーム オプションも提供しています。 RISC-V ASSP MCU は、RISC-V プラットフォームで開発するユーザに完全なソリューションを提供します。 事前に開発されたアプリケーション ソフトウェアは、IDH (独立系設計会社) によって開発された特殊なアプリケーション コードを使用して、工場生産時にデバイス上でプログラムされます。これにより、ユーザは、開発、テスト、検証の点で手間をかけることなく、高度なフィールド指向のモータ制御機能を追加できます。

さらに、RX26T MCU は、ルネサス独自のプラットフォームで開発するユーザにとって理想的です。 RA MCU と同じモータ制御キットを使用することで、ユーザは異なるプラットフォーム間で開発を簡単に拡張できます。

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