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Malini Narayanamoorthi
Malini Narayanamoorthi
Country Head兼アナログ&コネクティビティ エンジニアリング担当シニアダイレクター
掲載: 2024年10月4日

Malini Narayanamoorthiは2023年の初めにルネサスに入社しました。今はインドのCountry Head兼アナログ&コネクティビティ エンジニアリング担当シニアダイレクターとしてインドにおけるルネサスの戦略を推進しながら、ビジネスとエンジニアリングの両面でルネサスの存在感を高めています。Maliniはルネサスがインドに焦点を絞り始めた時期に着任して以来、さまざまな取り組みを進めてきました。インドのエンジニアリング設計チームの拡大、インド工科大学ハイデラバード校との提携をはじめとする産学連携、CG Power and Industrial Solutions LimitedおよびStars Microelectronics(Thailand)Public Co. Ltdと共同でグジャラート州に半導体パッケージング工場を設立する合弁事業もその好例です。

Maliniはインドにおけるルネサスの人員強化を進める一方で、女性リーダーとしての自身の経験をもとに女性エンジニアの雇用拡大を図り、多様な発想を生かして成長を促進できる体制を整えてきました。

最近では、ニューデリーで初開催された「SEMICON India」で、インドのナレンドラ・モディ首相や世界的半導体企業のトップと会議に参加したルネサスCEOの柴田英利をMaliniのチームがサポートしました。ルネサスは、同時に開催されたelectronica Indiaに約50種類のソリューションを出展。Malini自身も、このイベントで車載半導体に関するパネルディスカッションに登壇しました。

今回は、ルネサスの2030 Aspirationである「2030年までに売上収益200億ドル以上」を達成するうえで追い風となるインドの成長見通しと採用計画について、Maliniに話を聞きました。

質問: ここ数年、ルネサスがインドに注目しているのはなぜでしょうか?どのような成長機会を見出しているのでしょうか?

Malini: インドのモディ首相は2020年に発表した「自立したインド(Self Reliant India)」構想を推進するために、電子機器や半導体に重点を置いた経済政策・刺激策を導入しています。

かつて、80~90年代はVideoconやOnidaなどのインド企業が開発・生産したインド製の製品が普及していました。しかし、外国製品の輸入関税が緩和されたことで欧米企業の存在感が増した結果、国産ブランドの多くが徐々に市場シェアを失っていきました。国内製造を振興する新たな政策「Make in India」のおかげで、インドの企業は国内生産を望むようになり、政府はそれを実現するためのエコシステムを整備しています。半導体産業も例外ではありません。

質問: インドが設計・製造拠点の有力候補となるのはなぜですか?

Malini:インドでは多くの工科大学が新卒者を輩出しているため、高学歴で英語を話せる若手の人材が豊富です。インドはコスト競争力があり、地政学的にも中立な国なので、仕事がしやすい国でもあります。このような条件が揃っているため、ルネサスのような企業が事業を拡大するための拠点として魅力的なのです。

質問: ルネサスはインドでどのような事業を展開していますか?今後の成長計画についてもお聞かせください。

Malini: インドでは、ベンガルールにある最大の拠点にエンジニアリング、セールス、マーケティングの部門を置いています。デリーにはセールス&マーケティングのオフィスを、プネーにはエンジニアリング&セールスのオフィスを構えています。ハイデラバードとノイダにある最新のオフィスは主にエンジニアリング業務を担当しています。また、CG Powerとの合弁事業に少数株主として参画しており、組立からテスト、捺印、パッケージングまで請け負う工場をグジャラート州サナンドに建設中です。

ルネサスはインドの全拠点で事業を拡大しており、2025年までに人員を2024年末比で倍増を目指しています。

質問: 人員の増強は事業目標の達成にどう役立つでしょうか?

Malini: インド市場を攻略する方法の一つは、現地のニーズにマッチした設計を追求することです。例えば、インドの交通手段は、価格が手頃で購入しやすい二輪車が主流です。世界各国では四輪車向けの技術開発が進められていますが、二輪車市場向けの技術は多少改良されている程度です。つまり、インドには大きな需要を持つ大きな未開拓市場があるわけです。

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Two-wheelers dominate the India transportation market

新興企業や既存企業の間ではインドでの製品製造に対する関心が高まっていますが、これがルネサスにどのような影響があるのかと疑問に思う人もいるかもしれません。ルネサスは、自動車用から産業用まで幅広い用途に応じた半導体を取り揃えています。例えば自動車の分野では、高級車から大衆車まであらゆる車種に対応しています。また、当社のシステムソリューションチームはメーカ各社と協力して、インドで本当に求められているシステムレベルのPoC(概念実証)を設計しています。半導体のチップ単品でなく、システムレベルに重点を置いたこの取り組みは、国内での電子機器製造を推進するインド政府の取り組みとも足並みが揃っています。

現地のニーズにマッチしたものを、システムレベルで提供することにより、インド市場、ひいてはグローバル市場のニーズに応じた製品開発が可能になり、2030年までにルネサス全体の収益の10%超をインド向けが占めるという目標も達成できると考えています。

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India Semiconductor Market Size Chart

質問: インドは昔からハードウェアエンジニアリングよりソフトウェア開発で知られていますが、状況は変化しているのでしょうか?

Malini: 私が工科大学で学んでいた2000年代初頭は、非常に多くのソフトウェア企業が人材のスカウトに来ていました。インドではソフトウェア関連の仕事を見つけるのが今より簡単だったのです。やがて、多くのハードウェアメーカーがインドに進出しました。国策として電子機器の国内製造を推進していることもあって、大学では半導体や設計に関する学科が増え、優秀な人材を多数輩出しています。

インドにあるルネサスの拠点では、ソフトウェア&デジタライゼーションのチームに加えて、ハイパフォーマンスコンピューティング、エンベデッドプロセッシング、アナログ&コネクティビティ、パワーの各チームを拡大しています。また、製品開発を支援するシステム開発チームも強化しています。

質問: このような環境の変化に乗じて採用を強化するために、どのような取り組みを進めていますか?

Malini: 半導体市場は2024年現在、やや軟化しているものの、ルネサスはインドでの採用と成長に向けた投資を引き続き推進しています。インドでは数年前までルネサスの知名度があまり高くありませんでしたが、ここ数年で状況は大きく変わりました。当社はエンジニアリングチームの体制強化に力を入れ、組織としての底力を市場にアピールしています。もちろん、企業文化も従業員の定着に大きな役割を果たしています。詳しくは、ルネサスでの働き方を紹介したビデオや、採用ページで従業員が語るストーリーをご覧ください。

最近は、さまざまな大学と提携して、実際のエンジニアリング業務に備えるための教育プログラムを充実させ、インターンシップの機会を設けています。

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MOU signing with the Indian Institute of Technology Hyderabad for VLSI research and collaboration photo
インド工科大学ハイデラバード校(IITH)とのVLSI研究および提携に関する覚書(MOU)の締結

質問: 最新の報告によれば、昨年はインドでの新規採用者の30%が女性だったそうですね。その背景をお聞かせください。

Malini: 昨年インドで採用した新入社員の30%が女性だったのは非常に喜ばしいことです。インドでは、工科大学や工学部の卒業生の30~40%が女性であり、人材が豊富です。ただし多くの場合、女性は、職務変更や昇進、出産後の復職など、ワークライフバランスの変化を経験するにあたって、少しでも自信を高める必要があります。

ルネサスは女性社員の割合を増やそうと熱心に取り組んでいます、女性の応募者の面接にはたいてい女性社員が同席し、ルネサスでの経験を語ってもらっています。ロールモデルを見せることで、ルネサスが女性を歓迎し、大切にしている働きやすい職場だと示すためです。

女性の採用と定着に力を入れている人事チームの取り組みにも触れないわけにはいきません。最高人事責任者CHROのJulie Popeはダイバーシティ推進の立役者であり、ルネサスで働く女性たちのキャリアパスを支援するために尽力しています。

当社は、インド最大の女性向けキャリア支援プラットフォーム「HerKey」と提携することで、キャリア中断後の職場復帰を望む女性たちに「リターンシップ」の機会を提供しています。今後ルネサスがインド全土の拠点を拡大するにつれ、女性社員の割合はさらに増えていくものと期待しています。

質問: 学生らにアドバイスをする際、エンジニアだった若い頃のことを思い出すのではありませんか?今の仕事を選んだきっかけは何でしたか?また、ルネサスではどのような点にやりがいを感じますか?

Malini: 10代の頃はテニス選手を目指していましたが、ケガをしたので学業に専念することになりました。当時、ほとんどの学生がそうであったように、私も工学か医学のどちらかを選択しなければなりませんでした。数学やコンピュータサイエンス、物理学が好きな私にとって、工学は当然の選択でした。工学課程で学びながら、私はいつも教わっているテーマの全体像を把握したいと思っていました。この大局的なシステム思考はルネサスでの業務でも日々役立っています。

入社の決め手となったルネサスの好きなところは、制約がなく、型にはめられないという点です。私は昔から分野横断的に仕事をしてきました。これは自分の強みを生かすうえで役立っています。また、常に学びを追求するルネサスの企業文化も、一人の人間として、そして問題を解決するリーダーとしての成長を促してくれます。

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