ルネサスはこのほど、自社開発のRISC-V CPUコアを搭載した第一弾の32ビット汎用マイコンを発売しました。従来のArm® Cortex®-MコアベースのRAファミリ、ルネサス独自のRXコアベースのRXファミリに加え、オープンソースのRISC-Vコア製品をラインアップに加え、ルネサスは業界随一のマイコンのポートフォリオを拡充していくことで、リーダーシップをさらに強化します。
新しいRISC-Vマイコン「R9A02G021」の技術的な説明については、私の同僚Giancarlo Parodiが書いたこのブログ「RISC-Vの未来: 新たなフロンティアへの挑戦」をぜひお読みください。
私は、2024年3月の発売以来、エンジニアに性能と電力バランスの選択肢を提供することよって、マイコン分野がとてもエキサイティングな方向に進化していると感じています。1990年代のx86（CISC）CPUアーキテクチャとPowerPC（RISC）CPUアーキテクチャの古典的な議論とは異なり、今のマイコン分野には、競合するにせよ補完するにせよ様々なプロセッサコアが存在する余地が多分にあります。共通して言えるのは、お客様が設計の容易さや、広範なツールチェーンネットワークを重要視する傾向がますます強まっている中で、いかにして最高のサービスを提供するのか、ということです。
RISC-V： 今後の方向性
RISC-Vコミュニティである「RISC-Vインターナショナル」と緊密に協力することで、ルネサスのRISC-Vマイコンは、お客様が8/16ビットのマイコンから32ビットのオープンソース命令セットアーキテクチャにアップグレードしながら、民生、医療、産業、IoTアプリケーションの開発に新たな選択肢を獲得できるよう、体制を整えています。これは、大企業にとっては、市場へのパスが合理化されることを意味します。中小企業やスタートアップ企業にとっては、ルネサスの 統合開発環境 e² studio をはじめとする無償の開発環境と、IAR Embedded Workbench for RISC-V や SEGGER Embedded Studio for RISC-V のようなパートナの開発環境の両方を提供することによって、効率的にコードをコンパイル、解析、デバッグすることができるため、初期投資のリスクを軽減できます。
どのアーキテクチャが最適なのか？
ルネサスの8/16ビットマイコンRL78ファミリは、非常に幅広いポートフォリオと豊富なパッケージラインアップを誇り、低消費電力と低コストをターゲットとするアプリケーションにとって魅力的であることが長い間の実績により証明されています。32ビットマイコンのRXファミリは、より高い性能を必要とするお客様に向けて、独自開発のCPU、メモリ、バスなど各種IPを搭載し、最大限の動作性能とコード効率を実現するために最適化されています。Arm Cortex-Mコア搭載のRAファミリは、充実したArmエコシステムを活用できる利点が大きく、産業オートメーションやビルディングオートメーション、ヘルスケア、家電製品など、セキュリティを確保しながら高い演算性能が必要となるIoTアプリケーションの開発を加速します。
どこにも属さないCPUコアアーキテクチャに関心があって、従来のシステムの設計を見直す際にコスト削減を希望されるお客様は、RISC-Vマイコンに魅力を感じるでしょう。RISC-Vは、メインプロセッサ、グラフィックプロセッサ、サブシステムコントローラ、オーディオDSPなど、互換性がなく異なるソフトウェアスタックを使用するさまざまなプロセッサを内蔵する今日の断片的なSoCアーキテクチャを合理化し、統合する可能性を秘めています。RISC-Vは、単一のサプライヤの支配を受けないため、お客様の将来のソフトウェア資産を守り、新たなビジネスモデルを可能にします。
ルネサス独自のポートフォリオとしては、RISC-Vマイコンは、メモリ、周辺機能、性能、パッケージ、動作温度の組み合わせにおいて、既存のマイコン製品群と重複しないように設計されており、明確なポジショニングで差異化を実現しています。RISC-Vマイコンを追加したことで、多くの設計者が好むオープンソースアーキテクチャの選択肢が増えました。RISC-Vマイコンは、ルネサスのような業界リーダに期待されるプロフェッショナルレベルのツール、サポート、品質を備えています。ルネサスは、RISC-V技術の開発と、それをサポートするエコシステムの構築に多大なリソースを投じていくことを選びました。
ここでの真の勝者はお客様です。ルネサスはより多くの選択肢を提供することで、お客様やパートナ企業がイノベーションを起こすチャンスが広がると信じています。その結果を楽しみにしています。
