本Blogでは、インダクティブポジションセンサIC(IPS2200)付きBLDCモータの動作確認ができるRA6T2の評価環境についてご紹介します。
今回使用する評価キットはMCU、センサともにどちらも購入可能なキットです。(図1)
- モータ制御に特化したRAファミリMCUであるRA6T2を搭載した評価キットMCK-RA6T2
- インダクティブポジションセンサICであるIPS2200の評価キットEvaluation Kit for IPS2200
この環境で動作するアプリケーションノート及びサンプルプロジェクトも準備しており、RA6T2の製品ページからダウンロードすることができます。評価キットとサンプルプロジェクトを準備して頂ければ、下記の動画のように、すぐに動作確認ができるので、インダクティブポジションセンサIC付きBLDCモータを評価したい方にとって最適です。また、この評価環境とサンプルプロジェクトについてはアプリケーションノートにまとめていますので、より詳しい情報を知りたい方はRA6T2の製品ページからダウンロードしてください。
ここからは、インダクティブポジションセンサについて簡単にご紹介します。インダクティブポジションセンサは、コイルの電磁誘導を利用して、モータの位置を検出する非接触型のセンサです。センシング素子は、図2のようにプリント基板にコイルパターンをレイアウトした物を使用しており、このセンシング素子の上を金属板が通過することでモータの位置を検出できます。この位置情報はインダクティブポジションセンサICを経由してSin波、Cos波データとして出力されます。
次にこのインダクティブポジションセンサを用いるメリットについて3つご紹介します。
1つ目は、機能面です。インダクティブポジションセンサで用いるセンシング素子は使用するモータの極対数と同数のコイルパターンをレイアウトすることが可能(図3左側)であるため、様々な極対数のモータに適応することができます。そして、インダクティブポジションセンサ用のコイル基板はシャフトの先端や根元など取り付けができることから、モータ機器を設計する上で高い柔軟性があります(図3右側)。一方で、インダクティブポジションセンサは様々なモータに適応できますが、位置の精度を向上させるために、使用するモータに合わせたコイル基板を作成する必要があります。ルネサスではこのコイル基板を開発するためのサポートツール(Inductive Coil Design Tool Software)、80種類に及ぶリファレンスデザインを提供していますので、基板を開発する際は是非ご活用ください。
2つ目のメリットは耐環境性です。センシング素子に磁石を使用していないことから周辺の磁界に対して高い耐性があり同時に軽量化が可能です。加えて非接触方式なので埃・粉塵などにも高い耐性を実現します。
最後のメリットは、低コストです。一般的に、光学式エンコーダや磁気式エンコーダよりインダクティブポジションセンサの方が、採用している素子や部品点数からトータルコストを下げやすいという特長があります。光学式エンコーダはセンサ自体が高価であり、磁気式エンコーダは光学式エンコーダ自体よりは安価ですが、磁気シールドなどが必要となりますのでインダクティブポジションより高価になります。図4にそれぞれのコストのイメージを示します。
まとめです。インダクティブポジションセンサは、使用するモータに合わせてコイル基板を設計することにより、位置の精度を最適化でき、モータ機器の軽量化だけでなく高い耐環境性を持ちます。加えて他のポジションセンサと比べて低いコストで位置検出機能を有したモータ制御システムを実現することができます。そのため、産業用モータ、ロボット、医療機器といった過酷な環境で高精度な位置検出が必要なアプリケーションで採用が広がっています。
なお、モータ制御用MCUであるRA6T2の製品ページでは、このBlogで紹介したインダクティブポジションセンサIC付きBLDCモータ制御だけでなく、エンコーダIF付きモータ制御、センサレス制御などのアプリケーションノート/サンプルプロジェクトを準備しており非常に様々なモータ制御機器に適用が可能です。是非RA6T2の評価環境を入手し、モータ制御における優れたパフォーマンスを実感してみてください。