みなさん、こんにちは。RXマイコンのお客様の声をお届けしています。
今回登場いただくのは、「給湯」「厨房」「空調」などの分野で、「安全・安心」「快適性」「環境性」をキーワードに、人々の豊かな暮らしに貢献する商品とサービスを世界各国に提供されている、リンナイ株式会社様(以下リンナイ様)です。リンナイ様は今年創業100周年を迎え、さらに次の100年に向けた様々な取り組みを行っています。
このようなリンナイ様にとってとても大事な時期に、ドミノ式コンロが国際的デザイン賞である「グッドデザイン賞(日本)」、「レッドドット・デザイン賞(ドイツ)」を受賞されたと聞き、またタッチキーマイコンRX130を採用頂いている事を聞いた我々は、RXマイコンがお役に立てたのかを確かめたくなり、インタビューを申し込んだのでした。
快くインタビューに応じてくださったのは、開発時ハードウェアの取りまとめをされた、どこまでも紳士的な横山考志様、控えめな口調から聡明さがうかがえる曽我浩二様、ブランディングコンセプトがしっかりと伝わる明朗な説明から製品に対する自信が伝わってくる上野貴大様、そして、エンジニアとしての真摯な開発姿勢がうかがえる八幡修平様、以上4名の皆さまです。
今回は、リンナイ様に特約店菱電商事メンバーが訪問・同席し、ルネサスメンバーはリモートでインタビューさせていただきました。リンナイ様会議室には、展示場さながらにドミノ式コンロを運び入れてくださり、またもや大感動。お話を伺いながら、スタイリッシュなユーザインターフェイス (UI) 部を、操作を交えて見せていただきました。
(以下敬称略)
新たな市場を狙った高級感の演出には、電源off時に操作部の表示が透けて見える、ではダメ。
-グッドデザイン賞に輝いた、ドミノ式ビルトインコンロG:101のコンセプトを教えてください。
上野:高級住宅のキッチンにふさわしい重厚感と、日本製ならではの品質です。これまでにはない商品市場への参入でした。
通常、黒のトッププレートは、透明ガラスの全面に裏面から黒の印刷を施し、表示部エリアだけ印刷を抜きますが、電源off時にピクト等の表示部が透けて見えると外観品質が損なわれます。本製品では、黒色ガラスを採用し、電源off時に表示部が透けて見えないことにこだわりました。
横山:新たな高級商品開発の路線は、創業100周年以後の更なるグローバル化を推進するブランディングの一環でもあります。消灯時は一つの工芸品であるかのように操作部が完全に見えなくなり、onにした時にシンプルなUIがふわっと浮かび上がる上質なデザイン、としたかったのです。
会議室にセッティングされたドミノ式コンロ: まるでショールームのようなたたずまい
左: 電源off時 (電源スイッチのピクトのみが見える)、右: 電源on時 (炎の青が黒に映える)
左: タッチキー電極シート、右:操作部制御基板(電極シートの真下に配置される)
操作部をタッチキーにした理由は、機能面、デザイン、そして将来のUI設計を見据えたから。
-操作部をタッチキー方式にした理由を教えてください。
上野:今回はフロント部が一切ないドロップインコンロなので、操作部を天面に置いたこと、off時の美しさの演出のために操作部を完全にフラットにしたかったなどの理由です。
曽我: 機能面に加えて「シンプルなよいデザイン」のUIとしてタッチキーが適していると考えました。そして、これからの高級感の演出には、視覚だけではなくタッチの感触や音などの五感品質が求められると思うので、その点でも適していると考えました。
なぜRX130か? 答えは36chのタッチキーポート数と4mm厚ガラスを挿んでも正しく検知する感度、そして耐ノイズ機能。
-タッチキー制御部マイコンにRX130を選ばれた理由を教えてください。
八幡: タッチキーのポート数36chが魅力でした。他社は10-20chだったので。今後他のコンロにもタッチキーを流用したいと考えていたのでポート数を持っておきたかったのです。また、36chの内、タッチで使わないポートを汎用ポート・LED駆動に使えるので、タッチキーとLEDを1チップで制御でき、実装面積、BOMコストセーブの両面にメリットがあります。それから、電極シートへのコンロの熱の影響を避けるためにガラスに厚みを持たせたため、自己容量方式で感度の高いタッチキー機能がどうしても必要だったこともあります。その他に、RX130は動作時も待機時も消費電流が少ないことも重要です。電池式コンロでは待機時電流もかなり小さくする必要がありますから。
曽我: ルネサスのマイコンは内蔵発振器の精度が高いことも強みだと思っています。マイコンの選定を検討する際にはルネサスにあわせて精度の要求水準が上がっています。
-実開発での技術的課題や苦労された点をお聞かせください。
上野: まず基板スぺースの制約、次に操作部の温度、そして操作部ピクトの表示調整など課題は沢山ありました。
表示調整は、黒ガラスに白のLEDだとオレンジに見えるのを白く見せるために補正フィルタを使い、輝度調整のためにLEDの配置を少しずつ変えて試作をしました。外観だけでも通常の開発より試作回数が多かったです。
曽我: IH部は、ユーザーが熱い鍋を操作パネル上に置く可能性もあるので、電極シートへの熱影響を考慮した工夫をしました。大元の電源スイッチだけは何があってもoffできるようにバネ式にするなど、安全性を重視して、タッチキーとの使い分けを行いました。
八幡: 私からは2点あります。1点目は、IEC61004-6イミュニティ試験で、ノイズ印可時にタッチキーが反応しない問題が発生して、対策に苦労しました。調理中のユーザーが火を消せないという状態は大変危険なため許されません。この問題は、RX130のタッチキー毎にドライバ周波数を変えられる機能を使って最終的には解決できました。2点目は、操作部の故障検知の実装です。電極シートのパターンを変更しては評価する、ことを何度か繰り返しました。菱電商事さんやルネサスさんとも、新しいパターンが出てきたら「その日のうちに見解をください」、のようなやり取りをしてタイトに取り組みました。ただ、電極パターンを変更してもソフトウェアの変更は感度調整だけでよかったのと、その感度調整ツール(QE for Capacitive Touch) で簡単に行えて、さらにツールがプログラムコードを生成してくれるので、ハードウェア部門でカット&トライができました。周辺の定数をいちいち変更する必要もないので、厳しい要求仕様と納期をクリアする助けになりました。
横山: 私の経験では、ルネサスのマイコンは他社に比べてとにかくノイズに強いという印象がありますよ。
リンナイ様での様子 前方スクリーンにリモート参加者、画面右端にドミノ式コンロ
-今後、どのような開発を行っていきたいか、個人的な思いをお聞かせください。
上野: IoT化に加えてAIとdigital化。ものがつながることでその人に合わせた新しいサービスを提供することを目指したいと思っています。
曽我: 五感品質に訴える設計に挑戦したいですし、例えばガス衣類乾燥機が「外干し不要の生活様式」を実現したように、ライフスタイルや文化を変えるような製品を実現していきたいです。
八幡:通信方式の違いで連携できないガス機器や家電を、メーカーの枠を超えて連携できたらと思います。例えば乾太くんと洗濯機の連携など楽家事に繋げられたらよいと思います。
横山: リンナイの次の100年に向けて、健康、健全、感動、を目指す製品を作っていきたいですね。UIはもちろん、センシングや通信、パワーエレクトロニクスの4つの領域で様々な先行開発が必要です。特に、情報をセンシングしながらサービスにつなげることを考えていきたいと思います。
-ところで、グッドデザイン賞受賞後の周りの方の反応はいかがでしたか?
上野: 我々の直接の顧客は(住宅の)デベロッパーさんなのと、今回狙ったような高級住宅に住む人が周りにいなくて、ユーザーさんの反応は直接はわからないんですけど、デベロッパーさんへのヒアリングや内覧では好感触ですし引き合いも好調なので、この製品の良さを認めてもらえてるのかな、と感じています。
-長時間お付き合いくださり、ありがとうございました。これからもルネサスとRXマイコンをよろしくお願いいたします。