RX MCUを活用して、IoTアプリケーションを手軽に設計!パート1
IoT(Internet of Things)という言葉が世の中に浸透し、ここ数年でいよいよ広く普及する兆しが見えてきていると感じます。セルラー無線の取り組みがMCUベース(100MHz級)でも形になってきて、MCUベースのシステムがAWSやAzure等のクラウドシステムと直結(エンドユーザが別途無線中継器を用意する必要がない)できるようになってきたからです。
さらにはルネサスはセルラー無線のモジュール製品を提供するシーカンス社と協業することで、ルネサスのMCUとシーカンス社のセルラー無線のモジュールを組み合わせたIoTソリューションを提供できるようになりました。
https://www.renesas.com/about/press-room/renesas-and-sequans-collaborate-5g4g-cellular-iot
IoTといえばRaspberry Piに代表されるLinux搭載可能なMPUクラス(300MHz超級)をイメージされる方が多いかと思いますが、MCUクラスでもクラウド接続が求められるようになってきました。市場がより小型低消費かつ廉価なIoTシステムを求めています。
ハードウェアレベルでは、「MCU」と「セルラー無線のモジュール」があればIoTを小型低消費かつ廉価に実現可能です。課題は「ソフトウェア」です。「セルラー無線のモジュール」は予め「ソフトウェア」が書き込まれた状態で出荷・利用するのですが、「MCU」の「ソフトウェア」はユーザが開発する必要があります。ここでユーザは以下課題に直面します。
- AWSやAzure等のクラウドサービスに接続するプロトコル(MQTTやTLS、TCP/IP等)をどのように実現するか
- 通信環境不良等の要因で「セルラー無線のモジュール」が異常動作に陥った場合適切に復旧できるか
1.について、AWS社やMicrosoft社と技術定例を行い、AWS社が提供するFreeRTOS、Microsoft社が提供するAzure RTOSについて最適なセルラー無線のモジュールを制御するための機構ソフトウェアを共同開発しております。さらに最新のOSバージョンに追従したり、AWS社やMicrosoft社が提供するセキュリティパッチを適用するなどして、常に最適な状態のソフトウェアを提供できます。
2.について、ルネサスはシーカンス社やユーザと日々議論を行い、1.をベースとした復旧方法のガイドや、様々なケース(電波強度の強弱変化、動体として基地局の動的乗り換え、等)での実証実験を重ね品質向上に取り組んでいます。
上述した難しい課題1.2.をクリアしたソフトウェアはGitHub上で公開しています。またそのソフトウェアはe2 studioで読み込んで新規プロジェクト(ユーザシステムのベースライン)として自動生成することができ、ユーザはアプリケーション開発に専念ができます。
GitHub:
FreeRTOS: https://github.com/renesas/amazon-freertos
Azure RTOS: https://github.com/renesas/azure-rtos
環境構築方法:
FreeRTOS: https://www.renesas.com/blogs/rx-family-software-past-and-future-3
Azure RTOS: https://www.renesas.com/blogs/rx-family-software-past-and-future-4
また、このソフトウェアの動作確認に活用可能なマイコンボードを開発しました。「CK-RX65N」です。
このマイコンボードを用いることで、上述した難しい課題1.2.をクリアした状態からユーザはアプリケーション開発のみに注力することができます。
シーカンス社、AWS社、Microsoft社等の強力なパートナーとの共同開発により、MCUベースのシステムにまでIoT領域を広げることができつつあります。ただ、実は、筆者がルネサス入社した2003年に最初に顧客(家電メーカ)と共同開発したシステムがR8C@20MHzにNTTドコモ社のセルラー無線モジュールを接続し、とある家電にインターネット接続機能を持たせることだったことから、IoT自体は昔からMCUベースでも存在したといえます。当時はすべて自作ソフトウェアでしたが、クラウドサービスとの親和性や継続的な脆弱性対策が盛り込まれたいわゆる「OS: Operating System」がAWS社/Microsoft社からMCUに供給されるようになったことが、当時から大きく変わったことで、これによりIoTの潮目が変わったように思います。
CK-RX65Nは汎用的な評価ボードなのでまだまだ大きいイメージですが、最終製品に搭載されるRXマイコンはこの指先大の大きさのパッケージも選択可能です。
この中に、AWS社やMicrosoft社が開発した「インターネット機能付き超小型OS」を搭載することが可能です。現在、シーカンス社のセルラーモジュールやSIMカードがRXマイコン外部に必要ですが、将来これらもマイコンの一部として一体化してくることで、このサイズ感に収まってくるでしょう。ここ数年くらいでこのイメージ図の通り、指先大の「超小型インターネット接続無線システム」の完成を目指していきたいところです。