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Hirofumi Shigehisa
Hirofumi Shigehisa
Sr Mgr, Software Engineering
掲載: 2022年7月20日

概要

ルネサスは車のE/E アーキテクチャの中心であるセントラルゲートウェイ向けのSoC「R-Car S4」とその上で動作するソフトウェアを提供しています。セントラルゲートウェイは、車と外の世界をつなぎ、かつ、車の中のデータ通信を制御しています。車がクラウドとつながることで、例えば、これまでになかった盗難車両追跡やリモート故障診断といった便利なサービスも始まっています。

本ブログでは、R-Car S4で動作するソフトウェアを中心に紹介します。

背景

車の利便性向上や安全性確保のために、車の中で扱われるデータ量は年々増加しています。増加するデータ通信を効率よく管理するために、E/Eアーキテクチャは、従来の分散型制御からドメイン制御もしくはゾーン制御へ変化しようとしています。その結果、セントラルゲートウェイが誕生しました。セントラルゲートウェイはクラウドにあるサーバと車の接続や、車内の異なるネットワークドメイン間の接続を制御します。

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車内のネットワークで使用される通信プロトコルは従来、ISO規格で標準化されたCANがデファクトスタンダードでした。しかし、最近では大容量のデータ通信を行うため高速通信の可能なEthernetが普及しています。そのため、セントラルゲートウェイはこれらのプロトコルを扱うことが求められます。

セントラルゲートウェイ「R-Car S4」向けソフトウェア

R-Car S4で動作するソフトウェアを紹介します。R-Car S4についてはこちらを参照してください。

  • ルネサスは、R-Car S4向けのソフトウェアとして「R-Car S4 SDK (Software Development Kit)」を提供しています。本SDKは、Ethernetドライバ(Autosar MCAL/Linux BSP)や、Ethernet Switch Control Library、CAN-Ethernet Conversion Libraryなど、ゲートウェイ機能を実現するために必要なソフトウェアをパッケージングしたSDKです。お客様はSDKを利用することで、ゲートウェイアプリケーションの開発を容易に開始することができます。

    ここではいくつか代表的なゲートウェイ向けソフトウェアについて紹介します。

    Ethernet Switch Control Library

    Ethernet Switch Control Library は、Ethernet Switch HW IPの豊富な機能を簡単に利用するためのAPIを提供しています。従来、お客様がCPU上の独自ソフトウェアにより実現していた「プロトコルの種類(UDPなど)やEtherType(PingやARP)などペイロード内のデータを使用したルーティング処理」を、R-Car S4では本Library がEthernet Switch HW IPを用いて実行します。Ethernet Switch HW IPが処理することでCPU上のソフトウェアが処理するよりも実行時間が短縮され、低遅延のデータ送信が実現されます。この低遅延のデータ送信により異常検出から対処までの処理がよりリアルタイムに実行され、安全性が高まります。

    CAN-Ethernet Conversion Library

    CAN-Ethernet Conversion Libraryは、CANフレームデータとEthernetフレームデータの相互変換を行います。この変換処理を例えば、お客様が用意されたAutosar BSWのPDU routerを使用して行う場合、CANフレームデータとEthernetフレームデータを直接変換できないため、変換処理の完了までに時間がかかります。しかし、このLibraryを使うと直接変換できるため、変換処理の完了までの時間が短縮されます。これにより低遅延のデータ送信に貢献すると考えています。

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    R-Car S4

     

  • ルネサスはSDK を動作させる環境として、評価ボードだけではなくバーチャルな開発環境も提供しています。そのため、評価ボードがなくてもゲートウェイアプリケーションの開発を開始することができます。また、実デバイスにはないデバッグ機能をバーチャルな開発環境に取り込むことで、お客様の問題解決をサポートすることも検討しています。たとえば、期待する送信先にデータが届いていない場合、その解決に時間がかかることがあります。なぜなら、複雑なルーティング設定を紐解き原因を特定する必要があるからです。このとき、実デバイスでは取得できないデバッグ情報をお客様に提供することで、原因特定が早まるだろうと考えています。
  • お客様はSDKをWEBからダウンロードできます。SDKにサンプルコードも付属していますので、ダウンロード後すぐにR-Car S4とSDKの性能や機能を確認することができます。また、評価ボードの立ち上げ方法やSDKの使用方法を解説したビデオも、順次アップロードしていく予定です。

まとめ

本ブログでは、R-Car S4で動作するソフトウェアを中心に紹介しました。 ルネサスは今後もよりよいソフトウェアや開発環境を提供し、便利で快適な社会の実現に貢献していきます。

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