我々の身の回りのなくてはならない家電製品、またそれを製造するための工場で稼働する産業機器など、動くもののいたるところでモータが組み込まれています。技術革新のスピードは速くモータは用途に応じて多様化し、シンプルなDCモータはスイッチングによる制御で可能ですが、一般的にMCUやMPUによって電子制御し速度やトルク、場合によっては正確な位置をコントロールします。また各地域において省エネの法整備も進み高効率なモータ制御の実現を目指し各ベンダーは製品開発を続けています。
昨今、新型コロナウイルスはこのモータ市場にも大きな影響を与えました。リモートワークのためにエアコンの置き換え需要が高まり、旅行に行けない代わりキッチン家電の売上が伸び、特に高級機が売れるようになりました。このようにモータ機器の開発者は新たな機能の早期市場投入を低コストで実現するという課題に直面しているのです。
我々は、長年にわたりモータ制御向けにMCUや様々なソリューションをリリースし、この市場を支えてきました。今回リリースするRA6T2はRAファミリのモータ制御向けASSPの第二弾製品でArm® Cortex® M33 CPUと高速フラッシュメモリ、長年培ってきたモータ制御用周辺機能を融合させた製品です。
RA6T2の大きな特長は、そのCPUと120MHで動作するフラッシュメモリで実現する高いリアルタイム性能です。キャッシュメモリは高速CPUには有効ですが、低速フラッシュアクセスの場合、キャッシュミスヒットにより性能が低下します。シーケンシャルプログラムの場合であればプリフェッチ機能とキャッシュは安定したピークパフォーマンスを提供します。 ただし、一般的にモータ制御プログラムは分岐命令や割込みが発生するためミスヒットペナルティとしてフラッシュメモリへのアクセスが避けられません。RA6T2はキャッシュミスヒットペナルティが発生して、実フラッシュメモリのアクセスが発生したとしても高速アクセスが可能で大きな性能劣化がありません。これはリアルタイム性能が最重要なモータアプリケーションにとって大きなアドバンテージとなるのです。
Figure 1: RA6T2のブロック図
Figure 2: RA6T2のリアルタイム性能
今回このRA6T2と同時にリリースする非常に親和性の高いデバイスをご紹介します。実際のモータはMCUで扱うより大きな電圧と電流で駆動するため、MCUからのPWM出力を高電圧、大電流のスイッチングで出力するドライブ回路が必要になります。モータを駆動する FETやIGBTなどのパワー素子を駆動するためには十数V以上の電圧が必要となるケースもありプリドライバが必要になります。RAA227063はモータ機器の低コスト化を実現するための電流検出方式である3シャント対応高性能アンプとシステム電源機能内蔵の高機能プリドライバです。モータ動作電圧は4.5~60Vと幅広く、システムの小型化とモータ駆動効率が上がります。
Figure 3: RAA227063のブロック図と特長
今回この二つのモータ制御向けデバイスを組み合わせたウイニングコンボをリリースすることとなりました。ターゲットとなるアプリケーションは搬送用ロボットなどに組み込まれるトラクションモータです。RA6T2とRAA227063 3相スマートドライバは、処理速度と電力効率の完璧な組み合わせを提供し小型化が要求されるトラクションモータに最適です。 RAA227063は電力管理を統合してバッテリから直接3相ドライバとRA6T2に電力を供給し回路全体のサイズを縮小します。 RAA227063のプログラム可能なので、お客様はMOSFETを変更しソフトウェアによってスルーレート、デッドタイム、およびゲートドライブを調整するだけで、インバータパワーステージを最適化してさまざまなパワーレベルに対応できます。またRA6T2にはシリアル通信、SPI、I2C、CAN FDといった豊富なI/Fを搭載しておりホストシステムとの通信や他モータとの同期動作を実現することができます。
Figure 4: Winning Combination for traction motor
今後このウィニングコンビネーションをお客様の手元で評価できる環境を構築するためにRA6T2のモータ制御開発キット(MCK-RA6T2)をベースにインバータボードの開発を計画しています。
Figure 5: RA6T2 Motor control kit
各製品の詳細については製品紹介ページをご覧ください。