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オーディオ・プリプロセッシング・フロントとは何でしょうか?なぜそれが重要なのですか?

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Georgios Flamis
ジョージアス・フラミス
シニアエンジニアリングマネージャー
Published: January 29, 2025

Audio Pre-processing Front-end(APF)は、ノイズの多い環境での音声コマンド認識(VCR)と音声品質を向上させるために設計された、音声処理アルゴリズムの超軽量ライブラリです。 音響の雑音抑圧を利用することで、特に周囲の雑音が音声コマンド認識(VCR)に干渉するような場所で音声コマンド認識を使うような用途にとっていくつかの利点があります。 主な利点は次のとおりです。

  • 精度の向上: バックグラウンドノイズを減らすと、音声コマンドをより効果的に分離でき、システムの認識精度が向上します。 これは、雑音の多い困難な音響条件下でも、音声認識システムがユーザーコマンドを正しく解釈するために重要です。
  • ユーザーエクスペリエンスの向上: より優れたノイズ抑制により、ユーザーはコマンドを何度も繰り返す必要がなくなり、システム全体的なユーザーエクスペリエンスが向上します。これは、周囲の騒音レベルが高い環境では特に重要です。
  • 信頼性の向上: ノイズ抑制技術は、偽陽性と偽陰性を最小限に抑えることで音声コマンド認識システムの信頼性を向上させます。システムがユーザーの意図したコマンドに正確に応答し、誤認識のを減らします。
  • エネルギー効率: ノイズ抑制によって処理負荷が軽減される場合があり、リソースの効率的な使用とポータブルデバイスのバッテリ寿命の延長につながる可能性があります。
  • 多様な用途に: ノイズ抑制により、音声コマンド認識システムは、静かな部屋から騒がしい屋内外の環境まで、幅広い環境に対応した用途に導入することができます。

これらの利点は、より堅牢でユーザーフレンドリーな音声コマンド認識システムに貢献し、さまざまなユースケースでより効果的で信頼性の高いものになります。

オーディオ・プリプロセッシング・フロントはどのように機能しますか?

オーディオ・プリプロセッシング・フロントは、マイクと音声コマンド認識の間に連動して設定された2つの信号処理ブロックで構成されています。 RA6E1音声キットに組み込まれている2つのマイクを利用したアコースティックビームフォーミングと、音声とノイズが共存する環境において周波数選択性の減衰を使った音響ノイズ抑制です。 詳しくは以下をご覧ください。

  • アコースティックビームフォーミング は、特定の方向からの音に焦点を当て、他の方向からの音を抑制することで、オーディオ信号の品質を向上させるために使用される手法です。 これは、マイクの配列を使用し、信号処理アルゴリズムを適用して信号を組み合わせて、目的のサウンドを強化し、不要なノイズを減らすことで実現されます。
  • 一方、雑音抑制では、アルゴリズムを使用して主要な音(音声など)と雑音を区別し、ノイズ成分を選択的に除去または減衰します。 この手法は、特に周囲のノイズが大きい環境や通信システムで、音声の認識度を高めます。

その結果、Audio Pre-processing Front(APF)と音声認識(Voice Command Recognition, VCR)を連続して使う事で、ノイズが増えたとしても、音声の認識率が際立って向上します。

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Cascaded operation of the audio pre-processing front-end and voice command recognition for improvement in the recognition rate.

ルネサスのアプリケーション例:

ルネサスのオーディオ・プリプロセッシング・フロント(APF)は、その機能を評価するために2つのアプリケーション例を組み合わせて設計されています。 まずは、 CyberonのDSpotter を使って音声コマンド認識(VCR)の機能を強化し、そしてこのAPF(ノイズ抑制)を組み合わせたもので、ノイズの多い環境での評価時の認識精度の向上していることを示しています。 このアプリケーション例は、Voice Kit-RA6E1に直接組み込むことが可能なe2 studioのプロジェクトとして提供されています。

そして2つ目がオーディオ関連で、APF と RA ファミリ デバイス用の Renesas FSP ライブラリで提供されている USBx 機能を組み合わせたものです。 16KHzでのステレオオーディオ録音を実演し、APFの処理はオンボードのプッシュボタンで制御できます。

デモビデオやプロジェクトファイルパッケージなど、詳細については、RA6E1ボイスキットト または RA4E1ボイスキット のページをご覧ください。

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Audio Pre-processing Front-end Test Scene

まとめ

オーディオ・プリプロセッシング・フロント(APF)は、雑音による認識率の歪みを効果的に管理し、入ってくる音声の解像度を向上させることで、システムの品質を向上させる重要な役割を果たします。 APF技術は、不要なノイズの信号から目的の音声信号を分離するのに役立つため、周囲のノイズが大きい環境で特に有益です。 ルネサスのAPFは、高度なアルゴリズムを活用することで、必要な音源が正確にキャプチャおよび再生され、より信頼性の高く忠実度の高い音声認識システムを体験できます。 この技術は、音声コマンド認識、通話、音声の録音などと言った、音声を使ったさまざまなアプリケーションで不可欠です。 よって、APFの実装は、より堅牢でユーザーフレンドリーな音声UIシステムを実現し、さまざまな音響条件で優れたパフォーマンスを提供できます。

詳細については、Renesas AI Voiceテクノロジー のページをご覧ください。

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