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次世代28nmプロセス車載制御マイコンに向けて、さらなる大容量化、高速読み出し、およびOTA対応を実現するフラッシュメモリ技術を開発

~マイコン内蔵フラッシュメモリとして世界最大の24MB、世界最速の240MHzランダムアクセスを達成~

2019年6月12日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO:呉 文精、以下ルネサス)は、このたび28nmフラッシュメモリ混載の車載制御用マイコンに向けて、大容量化、高速読み出し、およびOTA対応を実現する新しいフラッシュメモリ技術を開発し、テストチップにて実証しました。新技術は、(1)マイコン内蔵フラッシュメモリとして世界最大となる24MB(メガバイト)搭載を実現、(2)同じくマイコン内蔵フラッシュメモリとして世界最速の240MHzランダムアクセスリードを達成、(3)無線によりソフトウエア更新を行うOTA(Over-the-Air)時に書込み動作の低ノイズ化を実現、(4)OTAによるソフトウエア更新時の実行ソフトウエア切り替えの高速化とロバスト性を実現しました。

 ルネサスは今回の成果を、2019年6月9日から14日まで京都で開催されている「2019 VLSI技術/回路シンポジウム(2019 Symposia on VLSI Technology and Circuits)」にて、6月12日に発表しました。

 近年、自動運転や電動化など先進的な車載技術では、制御ソフトウエアの大規模化とOTA導入による更新プログラムの格納領域確保によりマイコン内蔵フラッシュメモリの大容量化要求が加速しています。性能に関しては、機能安全等の新機能を追加しつつ処理のリアルタイム性を確保する必要があるため、フラッシュメモリのより高速なランダムアクセスリードが求められます。さらに、OTAに関し、走行中でも安定して更新ソフトウエアの格納が行える低ノイズ設計や、実行ソフトウエアを切り替える際のダウンタイムの短縮、およびソフトウエアの更新・切り替え時に意図しない中断が発生した場合でも誤動作を起こさないロバスト性、が要求されます。

 こうした要求に応えるためにこのたび開発したフラッシュメモリ技術の特長は以下の通りです。

(1)マイコン内蔵フラッシュメモリとして世界最大の24MBを搭載

 ルネサスでは、マイコン内蔵フラッシュメモリとして高速・高信頼のSG-MONOS(注1)技術を継続して採用しています。このたび、28nm世代のメモリセルサイズを従来発表(注2)の0.053μm2から0.045μm2未満に15%以上縮小し、チップサイズの増大を抑制しつつマイコン内蔵用途として世界最大の24MBの制御コード格納用フラッシュメモリを搭載しました。また、テストチップにはパラメータ等のデータ格納用フラッシュメモリ(データフラッシュ 1MB)も搭載しました。

(2)マイコン内蔵フラッシュメモリとして世界最速の240MHzのランダムアクセスリードを実現

 マイコン内蔵フラッシュメモリのランダムアクセスリード高速化のためにはワード線の分割が有効です。しかし、分割によりワード線ドライバの数が増え、それらを構成するトランジスタのTDDB(酸化膜経時破壊)による信頼性低下や、リーク電流増加によるワード線電源電圧の低下という課題が発生します。今回、これらの課題を、ワード線ドライバのストレス電圧緩和や、ワード線電源電圧ドライバの分散配置によって解決し、広温度範囲(接合温度-40℃~170℃)にわたって、マイコン内蔵フラッシュメモリとして世界最速の240MHzの高速ランダムアクセスリードをテストチップにて確認しました。

(3) OTA時の書込み動作の低ノイズ化技術を開発

 フラッシュメモリへの書込み動作時に、各メモリセルに流す書込み電流を動作初期と後期で可変にすることにより、当社従来技術に対して書込みスループットの低下なく外部電源(Vcc)のピーク消費電流を55%削減し、走行中のOTAにおいて電源電圧ノイズがマイコンの動作に及ぼす悪影響を抑制しました。また、書込み電流可変の考え方を応用し、書込みパルスを同時印加するセル数を増やす高速書込みモードで6.5MB/sの高速書込みも実現しました。大容量化に伴うテスト時間の増加を抑えることが可能です。

(4) ロバストかつ高速な制御ソフト切り替え可能なOTAを実現

 テストチップでは、制御ソフトウエアの格納用フラッシュメモリを実行中のソフトウエアの格納領域と、更新ソフトウエアの格納領域に2分割して、イグニッションOFF時に1ms(1000分の1秒)以下の時間で実行ソフトウエアを切り替えることを可能にしました。また、意図せずにソフトウエアの更新や切り替えが中断された後でも誤動作しないよう、ソフトウエアの切り替え設定情報の多重化や状態フラグ追加を行い、起動可能な制御ソフトウエアを確実に選択できるロバスト性と車両が使用できないダウンタイムの短縮を両立させました。

以上の新技術により、制御ソフトの大規模化、高速なリアルタイム制御および高度なOTAに対応することが可能です。今後もルネサスは、マイコン内蔵フラッシュメモリ技術の開発を推進し、新しいアプリケーションに対応してさらなる大容量、高速、低消費電力化に向けて取り組んでまいります。

以 上

(注1) MONOSは、Metal Oxide Nitride Oxide Siliconの略。ルネサスでは、EEPROM製品・セキュアマイコン等に20年以上の量産実績を有し、MONOS技術をマイコン内蔵用のフラッシュメモリに適用している。

(注2) 半導体集積回路技術に関する国際会議「2015 IEEE international Solid-State Circuits Conference(ISSCC 2015)」にて発表した、当社のフラッシュメモリ技術

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