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Leopold Beer
Leopold Beer
VP, Connectivity Sensor Division
掲載: 2024年9月19日

家庭、職場、学校で健康的な環境を確保するには、室内空気質の改善がますます重要になっています。米国環境保護庁の最新レポートによれば、アメリカ人は平均して1日の約90%を屋内で過ごしており、屋内の空気中の汚染物質は屋外の平均値の最大5倍に達する場合があるそうです。

ルネサスは2024年8月に、空気質モニタリングをさらに強化するためにセンサ製品のポートフォリオを拡充し、オールインワンの統合センサモジュールを発売しました。最新のモジュールには、工場で調整済みの環境センサとルネサスのマイコンを小型パッケージに集積し、人工知能(AI)アルゴリズムを搭載しています。

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当社のアプリケーションエンジニアのシュテファン・シュライバーは、こちらのブログで、大気汚染の現状を紹介し、ルネサスの新製品であるRRH62000モジュールが空気質の問題解決にどう役立つかを説明しました。

今回はこのテーマをお客様の視点からさらに掘り下げ、詳しく解説していきます。業界トップレベルの各種センサ、マイコン、AIポートフォリオからの幅広い測定データを基に総合的な空気質モニタリングを実現できるRRH62000は、空気清浄機、煙探知機、気象観測所など、環境センサのさまざまな用途に対応できます。

ここでは、3つのテーマに重点を置いて説明します。いずれも、リアルタイムの空気質データをスムーズに検出・解釈・共有するための重要な要素です。

包括的なセンサフュージョン

ルネサスの環境センサポートフォリオは、個別のセンサから始まり、高集積センサモジュールへと進化してきました。センサモジュールには、Reality AIの買収を通じて開発が進められたAIアルゴリズムとスマート補正エンジンが組み込まれています。今では、AIを搭載したセンサフュージョンプラットフォームの登場によってコストを30%以上削減し、基板面積を50%以上縮小するとともに、市場投入までの時間を半減させることで、お客様の負担軽減に貢献しています。

RRH62000モジュールを導入した最近の事例では、個々の事象を検出するだけでなく、温度や湿度、微粒子、揮発性有機化合物の同時測定も可能になりました。このように複数のセンサパラメータを組み合わせる手法(いわゆる「センサフュージョン」)によって、お客様固有の多様な用途に対応できるようになります。例えば、さまざまなガスや浮遊物質が存在する厨房で換気扇を監視する、菌を検出するといった用途に使用できます。他にも、面白い事例があります。最近、当社の設計者は「業務用オーブンにセンサモジュールを組み込みたい」というお客様の要望にお応えして、複数のセンサを使用して最適な自動調理プロセスを構築できる提案をしました。このオーブンがあれば、エンドユーザはキッチンで最高の仕上がりに調理することができます。

AIモデルによる継続的な性能強化を実現

お客様固有の検出要件に応じてデータを収集し、そのデータをセンサモジュールの補正エンジンのトレーニングに使用することができます。

この高度なデータトレーニングの仕組みを活用すれば、エンドポイントでAIによるイベント分類アルゴリズムを常に進化させていくことができます。その一例が、学習によって紙タバコと電子タバコの煙を区別する仕組みです。データセットを整備すれば、設計者はさらに幅広いプロファイルやパターンも特定できるようになります。ゆくゆくは、タバコの煙を検知するだけでなく、タバコの銘柄まで識別できるようになるかもしれません。

空気質基準への準拠

空気質基準は恐ろしく複雑で、頻繁に変更され、地域によっても大きく異なります。そのため、一般的には、世界中の全市場で全基準を遵守するために必要なデューデリジェンスを実施することは、ほぼ不可能です。

ルネサスはさまざまな空気質基準に精通し、その知識をソリューションに反映させています。また、各種建築基準に対応した独自のセンサ用ファームウェアを提供することで、お客様を機器開発をサポートしています。

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Air quality standards

ファームウェアを常に更新し、新たな動作モードを随時リリースしていくため、お客様は面倒な書類業務に煩わされることなく、現地の建築基準に対応できます。

つまり、ルネサスは最新のマイコンと環境センサといったハードウェアと、センサ用ファームウェア、AIアルゴリズムを組み合わせることで、柔軟で拡張性に優れた使い勝手の良いソリューションを実現しています。エネルギ効率の高い建築構造によって換気が制限され、高齢化によって生命に関わる呼吸器疾患のリスクが高まっている今、ルネサスのセンシングソリューションは、健康的な空気を吸える環境を確保するために貢献しています。

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