概要
クルマのE/Eアーキテクチャは日々、高度化・複雑化していますが、一方で、その開発にかけられる時間は従来よりもむしろ短縮される傾向にあります。複雑なE/Eアーキテクチャの振舞いを可視化(見える化)することは、開発を効率的に進めるためにも喫緊の課題です。私たちはこの課題を解決するための新たな統合開発環境の企画・提案・開発に取り組んでいます。
背景
自動運転や電動化、コネクテッド技術の進化に伴い、クルマの電子・電機制(E/Eアーキテクチャ)もますます複雑化・高度化が進んでいます。従来のE/Eアーキテクチャでは、ECU(クルマの電子制御ユニット)がそれぞれバラバラに機能していましたが、機能ドメイン毎に分割されたドメインアーキテクチャ、さらには膨大なコンピューティングパワーを持ったセントラルECUを中心として、クルマを複数のゾーンに分割して制御するゾーンアーキテクチャへと、E/Eアーキテクチャ自体が進化の一途をたどっています。こういったドメイン/ゾーンアーキテクチャでは、多数のECUが複雑に連携しながら動いており、またセントラルECUのような高機能・高性能なECUの中では複数の車載プロセッサが搭載される等、非常に対規模かつ複雑なシステムへと変貌してきています。
このようなE/Eアーキテクチャの進化に伴い、その開発の難易度もますます上がってきています。この課題難解決に向けて、当社からも様々なソリューションを提案させていただいていますが(参照1、2、3)、特に開発環境という観点からは、以下の3つが重要と我々は考えています。
- システム最適化への支援:システムが複雑化・大規模化すればするほど、どこに性能や処理能力のボトルネックがあるのか、見つけ出すのが困難になります。ここをいかにわかりやすく可視化する開発環境を提供できるかがひとつのカギとなります。
- 開発フローへの統合が容易なツール提供: CI/CD化が進んでいる現在、ソフトウェア開発環境も単独で優れているだけでなく、自動化された一連の開発フローにいかに容易に取り込めるかが重要となってきています。
- 多様な開発者に一貫した開発環境を提供:また開発を行うターゲット環境もリアルなデバイスも使われていますが、むしろ仮想化されたシミュレーション環境で開発するエンジニアの方が主となり、またその勤務地も様々です。そういった多種多様な開発者に一貫した開発環境、UXを提供することで、生産性の向上に貢献することも、もう一つ、重要なカギです。
具体例
私たちは上記のような背景を踏まえて、これまでの半導体中心の枠を超えて、お客様のE/Eアーキテクチャ開発を支えることで、クルマに新たな価値をもたらすような開発環境/ツールの企画・提案・開発に取り組んでいきたいと考えています。例えば、
- 複数のECUや車載プロセッサで構成されたシステムの最適化を支援するプロファイリング・適合ツール
- お客様の開発ワークフロー(Agile、CI/CD)やコンテナ化の流れを意識した、ツールポートフォリオの開発
- Post-COVID19を見据えた、リモート開発環境の提供 、等々。
まとめ
クルマのE/Eアーキテクチャの進化はとどまるところを知りません。それはその開発を足元で支える開発環境についても同様です。そんなクルマの技術革新を支えるソリューションの提供に、我々は今後とも取り組んでいきます。