2024年8月6日

Small Data Garden社は、フィンランドのスタートアップ企業で、室内の空気温度や換気を監視・制御できるように建築業者、不動産会社、住宅所有者をサポートしています。同社はターンキーのスマートセンシング・ネットワーク・ソリューションを開発して、エネルギ消費を最大20%、保守コストを30%削減することに成功しました。Small Data Garden社の開発パートナであるルネサスは、同社のパートナ兼会長のTimo Liukko氏にお話をうかがい、今日の最先端の空気質監視・制御システムにスマートIoTデバイスとクラウドデータサービスを実装する際の課題とビジネスチャンスについてお尋ねしました。

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ルネサス: Small Data Garden社が設立されたのはいつですか?

Timo: 私たちは2017年にチームとして活動を開始し、先進的な環境センサの設置により換気システムを改良しました。当時、その設置プロセスは複雑で、ワイヤを引っ張り、穴を開け、一連のローカルボックスを接続する必要があり、大変な作業でした。

ですから、私たちはその解決策として、長距離無線に対応した別の製品を採用して、いくつかのテストとプロトタイプを用意しました。お客様や投資家の皆様からも、当社の取り組みに大きな関心が寄せられていました。私たちが事業規模を拡大するにつれ、ルネサスのような非常に優れた信頼できるパートナと協力して、新しい市場を開拓するための素晴らしいセンサを採用することになりました。

ルネサス: センシングやデータ収集に関し、この市場を重視するのはなぜですか?

Timo: 当社は住宅建設市場に特に重点を置いています。北欧は気候が厳しく冬が過酷なことから、エネルギ消費が極めて少ない建物を実現する質の高い材料が必要となるため、この市場は注力すべき分野です。また、耐候性(屋外で変質を起こしにくい性質)の高い構造にしなければならないため、建物の換気にも課題があります。

技術をテストしていた初期の頃に、私たちはトナカイの群れの健康状態を追跡するロジスティクス用の特殊なアプリケーションと出会いました。フィンランドには約20万頭のトナカイがおり、毎日、どんな天候下でも継続的なモニタリングが必要です。

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これは私たちからすればニッチな分野ですが、当社が学び、建設業界での事業に応用してきたこともあります。つまり、トナカイの群れを追跡するには、非常に優れた無線技術や各種の過酷な環境条件下でも動作できる素晴らしいセンサ製品が必要だということです。センサ自体も長期間稼働できる必要があります。当社のデバイス技術では、通常、5年間は交換や保守が不要です。

ルネサス: Small Data Garden社が提供しているソリューションについて詳しく教えてください。

Timo: 室内の空気の質が低下すると、入居者の快適性、不動産の価値、およびエネルギ効率が下がり、職場の場合は生産性が損なわれる恐れもあります。当社のスマートセンサソリューションのラインアップは拡大を続けており、空気質、CO2濃度、温度、相対湿度、気圧、揮発性有機化合物の有無など、さまざまな環境変化を検出します。当社のIOTSU® VARMA 室内空気質ソリューション群は、家庭やオフィスから公共スペースや建設現場に至るまでのあらゆる場所で利用できます。

これらの製品は、高い測定基準と長いバッテリ寿命を維持しながら複数のセンサを1つのユニットにまとめる当社の高い技術力の証でもあります。そこに、ルネサス製のガスセンサがぴったりフィットしているのです。

ルネサス: 室内空気質とビル建設に関してお尋ねしますが、Small Data Garden社は、競合他社の空気質ソリューションとどのように差異化を図っていますか?

Timo: 全体像としては、お客様に付加価値を提供し、単に箱を付け替えるだけの業者ではないということを示す必要があると思っています。導入にかかる時間や製品の市場投入にかかる時間を短縮するためには、システムインテグレータやデータ管理サービスプロバイダのような中間業者の数が多すぎてはいけないとも考えていました。

そこで当社は、制御、測定、管理が簡単なスマートデバイスと環境アラームを追加しました。お客様との距離を縮める目的で、データの解釈方法や表示方法、センサの最適な管理方法など、センサ製品全体をケアするためのサービスも開始しました。こうして私たちは、スマートデバイスや総合的なデバイスソリューションのほか、現在では、建物の現状に関する週次レポートに加え、データをリアルタイムでお客様に送信するクラウドサービス一式も提供するようになったのです。これは直接フィードバックが得られるシステムです。

ルネサス: ターンキーのデバイスサービスソリューションを開発できたということですね。次はどうしますか?

Timo: センサネットワークとデータサービスを提供した後の第3段階としては、データを追跡するだけでなく、何らかの形で実用的な自動フィードバックを行うサービスを始めることを考えています。例えば、センサがアラームを発信した場合に、この情報をシンプルな形で転送し、換気システムが換気扇を回すことができるようにしたいのです。その後、空気質が規定の範囲内に戻ったことをセンサが検出すると、換気システムが停止するようにします。このようなスマートリンクにより、当社の付加価値サービスとIoTソリューションのメリットを拡大することができます。

ルネサス: 建設業界では、空気質はますます重要な課題となりつつあるため、運用基準を定義し、設定することが急務です。現在、この状況をどう乗り切っていますか?

Timo: 欧州連合(EU)内でも、いくつかの基準やプロジェクトがあります。私たちは幸運にも、こうした問題の多くを先取りすることができました。複数の地域のお客様と話し合い、個々のニーズへの理解を深め、最善の対応を工夫することができたからです。もちろん、そのためには現地のパートナと密接に協力し、必要なテスト環境や認証、文書化などのプロセスをお客様に確実に提供する必要があります。

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ルネサス: どのような経緯でルネサスが設計パートナとなったのですか?

Timo: 私たちは最高のパートナとテクノロジを探していたのですが、ルネサスのセンシングデバイスは低消費電力で柔軟性があり、セットアップやテストが簡単で、キャリブレーションも不要だということで薦められました。さらに、ルネサスのエンジニアリングサポートチームとも連絡がつき、私たちの質問に答えてくれました。

最終的に設計に使用したルネサスの室内空気質センサ ZMOD4410は、10年以上の製品寿命を実現しているほか、ファームウェアアーキテクチャをルネサスのファームウェアライブラリの1つからダウンロードし、簡単に設定することもできます。このセンサはAIに対応しているため、変化し続ける環境条件に常に適応できます。他の空気質センサで求められる再キャリブレーションは不要です。この自動適応機能は、当社にとって非常に重要でした。

ルネサス: Small Data Garden社の今後数年間の展望をお聞かせください。

Timo: 私たちは北欧やヨーロッパの市場をよく理解していますが、米国を含む他の市場でも同様に、環境や空気質への配慮が求められるようになりつつあると思います。室内空気質はサステナビリティの重要な要素であり、堅牢かつ自動的なデータ収集、分析、表示によってのみ管理できるという認識も広まってきました。市場は今、開かれている状態です。今こそ投資し、サービスを拡張すべき時なのです。

ルネサス: お話をありがとうございました。

Small Data Gardenの紹介ビデオ(英語)

ルネサス製品

ZMOD4410
組み込み型人工知能(AI)搭載のファームウェアで設定可能な室内空気質(IAQ)センサ