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RISC-Vがあなたの想像力をかきたてる

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Giancarlo Parodi
ジャンカルロ・パロディ
プリンシパル・プロダクト・マーケティング・エンジニア
掲載: 2024年3月26日

2020年10月以降、ルネサスはマイクロコントローラ分野でRISC-Vベースの製品開発を行っており、モータ制御と音声駆動HMIシステム向けの2つのASSP製品の発売に成功しました。 この度、汎用マイクロコントローラとしてRISC-Vポートフォリオを拡張します。 これはルネサスが自社開発したRISC-Vコアを採用した初のマイクロコントローラです。

R9A02G021汎用マイクロコントローラは、以下のブロック図に示すように、アナログとデジタルの周辺機能の興味深いコンビネーションを特長としています。

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R9A02G021 RISC-V MCU block diagram
図 1: R9A02G021 RISC-V MCU ブロック図

このデバイスには128KBの大容量プログラムメモリがあり、それは2KBの小さな消去可能なブロックサイズで構成されており、更新可能なユーザブートローダコードを実装するために最初の16KBのスタートアップセクションを交換することが可能で、フィールドでのアップデートをサポートします。 ファームアップデートプロセスの信頼性をさらに高めるために、フラッシュプロテクション機能により、誤って消去されないようにメモリ領域が保護され、保護を永続的にすることができます。

加えてソフトウェアを保護するために、実行のためにフェッチするだけでデータとして読み出すことができないプログラムコードを保持するメモリ領域を定義することができます。 これにより、単純なコピーから保護された実行可能なセクションが効果的に作成されます。 生産管理の点では、ユニークID(ルネサス工場でプログラムされた読み取り専用のデバイス固有のシリアル番号)と、64ビットのユーザー定義値であるユーザIDを使用して実装できます。 ユーザIDは、生産工程にてお客様がメモリの特定領域にプログラムすることができ、アプリケーションがユーザ定義のメモリ位置に特定の「ロック解除キー」値を保持している場合にのみ読み取り可能になります。 このようにして、正当なアプリケーションのみが機密値にアクセスできるようにすることができ、外部機器の認証やデータ暗号化キーの生成などの仕掛けとしてさらに使用できます。 実際、搭載している真性乱数発生器は、このような単純で効果的なユースケースをサポートするために組み込まれています。

16KBのオンチップRAMは、周辺機能がデータバッファリングする際に役立ち、必要なすべてのアプリケーション変数を保持するのに適したサイズです。 SRAMのほぼ全体がパリティビットで保護されており、そのうちの4KBは信頼性を高めるためにシングルビットエラー訂正とダブルビットエラーを検出できるECCコードによって保護されています。 これは、偶発的な環境変化(例えば、常に存在する宇宙放射線粒子)からさらに保護する必要があるアプリケーションの重要な変数を格納する場所として使用できます。

アプリケーションパラメータとランタイム情報のステータスは、4KBの不揮発性データフラッシュメモリ(一度に1KB単位で消去可能)に保存でき、EEPROMのエミュレーションにも使用できます。

システム性能を見ると、ルネサスのRISC-V CPUは、オープンソースのコンパイラですでに3.27CM/MHzという並外れたベースラインとなるCoreMarkスコアを達成していますが、他のパートナによるプロフェッショナルツールチェーンではさらに改善することができます(今後、EEMBCのWebサイトでさらに多くのスコアが公開される予定です)。 RISC-V命令セットアーキテクチャ(ISA)は、CPU実装を最適化するのに理想的であり、ルネサスは組み込みシステムにとって非常に重要ないくつかの拡張機能の追加を行っています。 乗算とビット操作の拡張機能、および組み込みのハードウェア除算器により、より少ない命令で同じ結果が得られるため、演算が高速です。 さらに、短縮命令を追加することで、コードサイズの縮小、実行の高速化、フラッシュプログラムのフェッチ回数の削減による省電力化に貢献します。

また、CPUには、プログラムフローを観察し、分岐中に最も可能性の高いパスを選択できる動的分岐予測が組み込まれているため、パイプラインを中断したりフラッシュしたりすることなく、次の命令を実行できます。これにより、サイクルあたりの命令の総数が向上します。 これらすべてのCPU機能を組み合わせることで、ユーザはこのようなコンパクトなデバイスで非常に高性能なアプリケーションを開発できます。

全体として、ルネサスは独自のRISC-VベースのCPUコアを開発することで、実装を最適化し、設計の選択を完全に網羅し、将来の製品のロードマップを確保することができます。 ルネサスは、マイクロコントローラ向けCPUの実装において豊富な経験を有しています。 これにより、ルネサスの品質に裏打ちされた商業的に提供可能な製品の導入を保証し、独自アーキテクチャに関するお客様の懸念を排除することができます。

真のパフォーマンスは、十分なI/Oインターフェイスがなければ発揮できません。 このデバイスは、アナログとデジタルの周辺機能のバランスが取れており、多くのビルディング・ブロックがすでにMCUに組み込まれているため、ミックスド・シグナル・アプリケーションを低コストで実現できます。 たとえば、アナログ側には、10チャネルの12ビットA/Dコンバータ(ADC)、2チャネルの8ビットD/Aコンバータ(DAC)、2つのコンパレータ、およびオンチップ温度センサがあります。 ADCとコンパレータは、1.6V〜5.5Vの全動作電圧範囲で使用でき、ADCは外部電圧リファレンスも入力できるため、アプリケーションのニーズに簡単に適応できます。

デジタル接続部分は、UART、SPI、I2C、さらには専用のリモートコントロールインターフェイスなどの多くのプロトコルをサポートします。 バッテリ駆動のアプリケーションは、すべてのSRAMのデータを保持したまま、300nAの優れたスタンバイ消費電流で実現できます。 この状態では、外部ウェイクアップイベントに反応する準備が整っており、アプリケーションはわずか4μsで迅速に動作を再開します。 長いスタンバイ時間は、リアルタイムクロックまたは内蔵の32ビット低電力タイマによって実現できます。 信頼性を重視するアプリケーションには、アプリケーション・ウォッチドッグタイマ、クロックに依存しない独立ウォッチドッグタイマ、CRCユニット、クロック・モニタ、およびADCセルフテスト・ロジックなどの機能を活用することができます。 動作温度範囲も広く、125°Cまでの温度で動作可能です。

新しいアーキテクチャの開発を始めることは、特に市場で実績のあるレガシーアーキテクチャや独自のアーキテクチャでの作業に慣れている場合、決して簡単ではありません。 少なくとも、従来との違いの複雑さを理解したり、実開発に携わる設計者はテストプラットフォームを入手し適切なツール環境を構成して試すのに時間と労力を費やす必要があるように感じるかもしれません。 その課題を解決するために、ルネサスはお客様の試作・開発をスムーズかつ簡単にするフル機能のツールセットを無料で提供しています。 Eclipseベースのe² studio IDEには、コード生成プラグイン、LLVMベースのコンパイラ、およびデバッグ環境が含まれています。 つまりプロジェクトのテストを開始するために必要なすべての構成要素が全て含まれているのです。 また、すでに利用可能なサンプルプロジェクトや、今後さらに多くのプロジェクトが予定されている多くのアプリケーションノートを参照することもできます。

また、是非開発用の プロトタイピングボードを手に入れてください。これは理想的なハードウェアプラットフォームで低コストで、センシング、ディスプレイ、コネクティビティ機能の拡張ができます。 あなたはPmod™、Arduino、またはGroveアドオンモジュールをお持ちでしょうか? このボードには各コネクタが付属しており、すぐ接続して評価可能です! またオンボードのSEGGER J-Linkを使用すると、USB-Cケーブルで接続するだけでプロジェクトのテストを開始できます。 同じ接続で仮想 UART-CDC チャネルもサポートできるため、アプリケーションのデバッグ コンソールまたは制御端末を実装できます。

e² studio環境に同梱されているツールをスマート・コンフィグレータと呼んでいます。 IO、クロック、システム設定、さらには周辺機器の低レベルのハードウェア ドライバ API の構成コードをセットアップして生成できます。 マウスを数回クリックするだけで、完全なプロジェクトを生成することができます。

IAR Embedded WorkbenchやSEGGER Embedded Studioなどの商用IDEは、RISC-VエディションでルネサスR9A02G021をすでにサポートしています。 スマート・コンフィグレータはスタンドアロンでも利用でき、これらのIDEのプロジェクトを生成してスムーズな移行を実現できます。 さらに、SEGGERは、R9A02G021マイコンで開発するルネサスユーザに特別割引を提供しています。詳細については、 Embedded Studioソフトウェアのページを参照してください。

RISC-Vは、新しく登場した自由でオープンなISAであり、エンジニアリングコミュニティ内ですごい勢いで広がってきています。 ルネサスは、組み込みMCU分野での製品開発においてリードしており、このMCUはこのエキサイティングで有望な技術をユーザの製品に導入するための理想的なプラットフォームを提供します。 いち早く試すこともできるので、 ぜひ renesas.com/R9A02G021 にアクセスして、キットの1つを手に入れて、今日からRISC-Vの冒険の一歩を踏み出しましょう。

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