車載事業の顧客価値シリーズ⑮：MCUに最適な電源を供給するPMIC

小林大地

Application Engineer

掲載: 2020年12月9日

はじめまして。ルネサスの小林と申します。
皆様はPMIC(ピーミック、ピーエムアイシー)と呼ばれる製品についてご存知でしょうか。日本語では”電源IC”や”電源管理IC”と呼ばれている製品です。本日は電源ICの中でも車載向けの電源ICについて紹介したいと思います。

近年、自動車分野は電動化・自動化・Connectedなどの技術革新が進んでおり、自動車の進化に伴って車に使われるマイコンの性能、搭載数も成長を続けています。

一方、マイコンの高性能化に伴いマイコン動作に必要とされる電源は5[V], 3.3[V], 1.25[V]といった複数系統以上が必要とされ、起動時の各電源系統の立ち上げ順序やタイミングに関して制約が出てきています。起動時だけでなく、電源立ち下げ時にも同様に制約があり、システム設計者は制約に注意して開発を行う必要があります。

また、車載向けの製品ではより安全な自動車を実現するためにさまざまな監視・診断機能、保護機能が求められます。例えば、各電源系統の過電圧/低電圧検出、過電流検出、電源ICの過熱検知機能、マイコン動作監視機能などが必要になります。システムの安全要件と電源要件を満たすように電源構成を検討することはシステム設計者の大きな負担となってきています。

そこで、ルネサスではこの課題を解決するためのソリューションとして、マイコンに適したPMICを提供しています。 PMICとマイコンとセットで使用することで、ユーザーに以下のようなメリットを提供することができます。

・複雑な電源シーケンス(電源の立ち上げ立ち下げ順番、タイミング)を制御し、開発負担を軽減。
・車載マイコンに必要な電源機能、電源監視機能、保護機能などを1チップに集約することで基板面積を削減可能
・ルネサスのリファレンス接続図、接続検証、推奨周辺部品リスト(BoMリスト)を活用し、開発工数を削減
以上に述べたように、ルネサスはマイコンに適したPMICを提供することができます。

ここでルネサスPMICの監視機能について一つ紹介します。
ルネサスPMICにはウォッチドッグタイマ機能が搭載されていてマイコンの動作を監視することができます。マイコン動作中、PMICはマイコンへ一定周期でトリガを要求し、このトリガが正しいタイミング/形式で返されてこなかったときにマイコンをリセットします。
この機能によってマイコンに何らかの問題が発生した場合でも、外部PMICで問題を検出し、再起動をかけて安全な状態へ戻すことができます。

また、ルネサスRH850/P1xマイコン用PMICのRAA270005では車載品ならではの要求、クランキング時動作にも対応しています。
車載バッテリはエンジン始動の際にスターターモーターに電流を流すため、一時的にバッテリ電圧が低下します。(例えば、200Aを流す場合、配線抵抗が0.01Ωでも約２V低下する計算になります。車載バッテリは通常12Vなので２V低下の影響が大きいことがお分かりになると思います。)　アプリケーションによってはバッテリ電圧低下時にもマイコン動作が必要な場合があり、RAA270005では昇圧回路を搭載し、バッテリ電圧時でもマイコンへ安定した電力供給を維持するようになっています。以下の図はRH850PMICを使用した電動パワーステアリングシステムの一例です。