電子機器を設計するエンジニアのニーズは、プログラマビリティ(プログラムのしやすさ)から、低消費電力、低コスト、省スペース、迅速な市場投入、そして新しいソフトウェアの使い方を学ばなくても開発できるプロセスなど、多岐に渡ります。ルネサスはこのようなニーズに応えるため、アナログデジタル混載プログラマブルICのGreenPAK™と、そのデジタル版となる低容量のFPGA製品ForgeFPGA™を提供しています。
GreenPAKはもともと米Silego Technology 社が開発したもので、英Dialog Semiconductor社がSilego社を買収し、さらにルネサスが Dialog Semiconductor社を買収したことから、現在ルネサスの製品として販売しています。GreenPAKはアナログやデジタルのディスクリート部品を集積化したミクスドシグナルICです。ワンタイムプログラマブル(OTP)不揮発性メモリから回路情報を展開することで様々な機能を実現します。今までは煩雑な設計プロセスに数週間~数ヶ月もの期間と多額の費用を費やすしかなかったユーザでも、GreenPAK製品をベースにして設計を効率的に進めれば、わずか数時間のうちにデスクトップ上でカスタム仕様のデジアナ混載ASICを開発することができます。
デジアナ混載GreenPAKもデジタル版ForgeFPGAも、ユーザフレンドリな専用のGUIソフトウェアツール環境「Go Configure™ Software Hub」を使えば、特定のプログラミング言語の知識がなくても、GUI上で手軽に機能を設定することができます。
GreenPAK:プログラマビリティと使いやすさを両立
ルネサスは、GreenPAKのポートフォリオを、アナログ機能強化製品を発売するなど拡充してきました。今や約50種類のベースダイから数千以上のカスタム製品が誕生しています。ベースとなる各ダイには、さまざまなマクロセル、ルックアップテーブル、カウンタ、ディレイ、フリップフロップとラッチ、オペアンプや、信号および電圧リファレンスモニタリング用のA/DやD/Aコンバータなどが搭載されています。ユーザがカスタムのステートマシンを迅速に開発できるよう、非同期ステートマシン(ASM)マクロセルも用意しています。
GreenPAKは、10~30個のコンポーネントを1つのカスタムICに集積することで部品点数の削減、基板面積の縮小、消費電力の低減を実現し、部品コストを最大1/3まで削減できます。製品の市場投入までの時間が短縮されるだけでなく、カスタムASICのNRE(非反復エンジニアリング)費用も節約できます。
使いやすいGreenPAKの設計ソフトウェアを利用すれば、ユーザ自身で作業を進めて設計上の機密事項を保護することも、また回路図の素案を用意した上で、ルネサスのグローバルアプリケーションエンジニアチームに設計を委託することも可能です。そのためにダウンロードできる資料が「Renesas GreenPAK Cookbook」です。これは、GreenPAK IC用のミックスドシグナル設計のテクニックとアプリケーションをまとめたガイドブックで、システムレベルの回路設計者向けに費用対効果の高いカスタムソリューションを紹介しています。
設計が完了すると、独自のセキュアな構成ファイルがGreenPAK GUIから出力され、不揮発性メモリに書き込まれます。設計に変更が生じても、エンジニアはほんの数分で新しいデバイスをリスピン(再設計)することができます。
お客様からも高い評価をいただき、GreenPAKデバイスの出荷数は50億個を超えました。監視回路やシステムリセット、電源シーケンスからモータ制御、温度調整に至るまで、さまざまな民生用、産業用、通信用機器、そしてAEC-Q100認定GreenPAKは車載用にも使用されています。
ある事例では、お客様がTWS(True Wireless Stereo)イヤホンと充電ケースの間のシンプルな電力線通信プロトコルを開発しました。別の事例では、ブザーモータ駆動用の高集積の昇圧コンバータに代わって最新のGreenPAKが採用され、基板サイズと消費電力を50%縮小、削減することで30%以上の小型化を実現するというお客様の意欲的な目標が達成されました。お客様は、私たちが想像もしなかった方法でGreenPAKを使用し、私たちを何度も驚かせてくれます。
低価格で小型、低消費電力のForgeFPGAファミリ
ルネサスはGreenPAKのデジタル版で小型、低価格、低消費電力のForgeFPGAファミリの提供を開始しました。多くのFPGAデバイスメーカは密度を競い合い、1つのデバイスに数千万もの論理ゲートを搭載しています。一方、ルネサスは予算や電力に制約のある多くの設計者のために、1,000程度のルックアップテーブル(LUT)のFPGAを用意しました。高密度FPGAの原価は1,000ドルを軽く超えるのに対し、ForgeFPGAは50セント以下で購入できる低密度の低価格なFPGA製品です。
この低密度ForgeFPGAにより、これまで高価なFPGAやマイコンと外部回路を組み合わせて設計していたアプリケーションを低コストで実現できるようになります。活用例としては、コスト的に厳しい大量生産の民生品やIoTアプリケーションのデータパイプライン、プロトコル変換、センサインタフェースなどに使われています。
ForgeFPGAの開発環境には2種類あります。1つは、回路図をキャプチャするだけの平易な開発フローを採用したマクロセルモードと、経験豊富なFPGA開発者が使い慣れたVerilog環境を提供するHDLモードです。ユーザはモードを自由に切り替えて使用できます。
消費電力やスペース、コストの制約がある場合には、GreenPAK とForgeFPGAという2つのプログラマブルデバイスの利用を検討してみてください。どちらも使い勝手の良いソフトウェア、無償ライセンス、アプリケーションサポート体制を備えているため、コストを抑えながら設計のスピードと効率を向上させることができます。